フレデリック・ショパン⑧〈プレリュード:前奏曲 後半〉6選

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クラシックショパン

〈連想第83回〉

前回は、ショパンのプレリュードの前半12曲から6選しましたが、今回は後半の12曲から6選します。

後半は前半よりも長い曲が多く、更に音の深みを増し、静かに深く心に訴える名曲ぞろいです。

ノクターンやマズルカ、そしてサティやドビュッシーを想起させる近代的な響きも感じられるものが多くなってきている印象です。

1 プレリュード28番13 嬰ヘ長調

ノクターン風の静かでゆっくりとした曲で、演奏時間も「NO15」「NO17」についで長くなっています。

中盤以降は、サティやドビュッシーの初期ピアノ作品を思い起こさせる、幻想的で印象派的な近代的な響きを強く感じる、プレリュード中でも屈指の美しい曲です。

演奏は、2005年ショパンコンクール1位だった、ポーランドの「ラファウ・ブレハッチ」です。

2 プレリュード28番15 変ニ長調「雨だれ」

「別れの曲」「ノクターン9-2」「子犬のワルツ」などと並び、「どこかで聴いたことがあるショパンの曲」に入るであろう「雨だれのプレリュード」です。

マジョルカ島の宿泊先で、神経をすり減らして精神を病みかけながら書かれたといいます。

練習曲中最も長く、曲中明暗がくっきり表現されるストーリー性のある曲となっています。

演奏は、一時期NHKのピアノレッスン番組で講師もしていた、フランスの「シプリアン・カツァリス」です。

3 プレリュード28番17 変イ長調

「雨だれ」を除けば、プレリュード中最も知名度が高く演奏機会も多いであろうプレリュードのハイライト的な名曲です。

とても美しく、淡々とした中に現世離れした深淵な響きを感じます。

曲の長さも雨だれの次に長く、曲としての構成を持っているほか、曲調もこの1曲だけ独特です。

メンデルスゾーンは、「とても好きな曲だが私には書けない性質のものだ」と称賛しました。

この曲は、ショパンが好んだ「変イ長調」であることも偶然ではないような気がします。

演奏は、旧ソ連の巨匠「リヒテル」と、ポーランドの巨匠「アルフレッド・ルービンシュタイン」、2人のレジェンドを連続してお聴きください。

4 プレリュード28番19 変ホ長調

明るく軽やかな曲調ながら、ショパンらしく魂を揺さぶるようなとても美しく深淵な響きがみられます。

演奏は、一連のショパンシリーズに何度も登場している、エレガントな演奏で右に出る者のいないフランスの天才ピアニスト「サンソン・フランソワ」です。

5 プレリュード28番23 ヘ長調

主旋律を転調させながら繰り返す軽快な曲。

主旋律が転調を繰り返すという点では、「マズルカ:43-3」とも共通しています。

古典的な響きを感じる中に、和音の革新的な使われ方がなされるなど、短いながら濃い作品です。

演奏は、2000年ショパンコンクール1位だった中国の「ユンディ・リ」です。

6 プレリュード28番24 ニ短調 

プレリュードの最後を飾る激情的な曲。

最後はピアノの1番低い音を3度鳴らして終わるところが、調性にこだわって作ったこの作品に貫かれたコンセプトを感じます。

演奏は、1980年ショパンコンクール1位だった、ベトナムの「ダン・タイ・ソン」です。

いかがでしたでしょうか。

前奏曲は、この24の作品集のほか、単独で3曲ありますが、24の前奏曲とは別の独立した曲なので今回は取り上げません。

緻密に構成されたアプローチと素直に心に響く芸術性を兼ね備えた「プレリュード:前奏曲」もまた、ショパンの代表作の1つと言えます。

さて、これまで「練習曲」「前奏曲」と、ドビュッシーがショパンへの敬意を込めて作曲した作品集の、大元のショパンのものを取り上げてきました。

次回以降は、ドビュッシーの初期の作品で、ショパンと同タイトルである「バラード」「マズルカ」「ノクターン」「舟歌」などの、大元のショパンの作品を取り上げていきたいと思います。

聴けば聴くほどショパンの独創性が感じられる名曲だらけです。