〈連想第17回〉
前回まではユーミンが「荒井由実」としてリリースした4枚のアルバムを取り上げました。
今回はユーミンとは特に接点がないように思われる「小西康陽」を取り上げます。
「小西康陽」は元ピチカート・ファイヴの作詞作曲プロデュースを担ったコンポーザーで、驚異的なレコードコレクターとしても有名です。
音楽的には、60年代前後のアメリカンポップス、70年代のレアグルーヴ・フリーソウル、ジャズ・アシッドジャズ、AOR、90年前後のヒップホップやハウスなどのクラブミュージックのほか、日本の歌謡曲など非常に広く深い下地があります。
そのおしゃれで軽やかなスタイルは90年代に「渋谷系」として一時代を築き、「小西康陽」はその代表格でした。
そんな「小西康陽」は、たくさんの音楽的な下地の一つにユーミンからの受けたインスピレーションもあり、特にその独創的なコード進行などに驚いたようで、「きっと言える」「ルージュの伝言」などのカバー曲もあります。
今回はそんな「小西康陽」が、自身のグループであるピチカート・ファイヴ以外のプロデュースした曲から6選します。
1 野本 かりあ – きっと言える(2002)
ユーミンの「きっと言える」のカバーです。
小西氏がド肝を抜かれたというコード進行が独創的なユーミンのこの曲を、テクノDJもやっているモデルの「野本かりあ」が歌っています。
イントロのドラムがなった瞬間小西康陽だとわかるサウンドで、ユーミンらしさと小西康陽らしさが共存しています。
ちなみにユーミンの曲では「ルージュの伝言」も「メグ」というアーティストでカバーしています。
2 m-flo – hands(readymade JBL mix 2000)(2000)
m-floのプロデューサーであるDJタクは、小西康陽からの影響を公言しており、意識的にサウンドやアルバムの構成で表現したりしています。
この曲はm-floの初期の作品のリミックスで、小西康陽との相性の良さが感じられます。
まったりとリラックスできる小西康陽らしい1曲です。
3 吉村 由美 – V・A・C・A・T・I・O・N(1997)
PUFFYの吉村由美のソロシングルです。
小西康陽氏らしい元気一杯のごきげんな路線です。
大ヒットした香取慎吾の「おっはー」などと同路線で、ピチカート・ファイヴでいくと、「ベイビー・ポータブル・ロック」などでしょうか。
ちなみにパフィーの曲はリミックスも手がけています。
4 小倉 優子 – オンナのコ♡オトコのコ(2004)
小西氏はアイドル系もちょこちょこ手掛けていますが、その中の代表的なものの一つとしてこんなものもあります。
小西節全開のこの曲、素晴らしくて「さすが」と唸らされます。
5 ルパン三世主題歌 3(the readymade ヤング OH!OH!MIX)(1998)
ルパン三世の曲を様々なアーティストがリミックスした曲を収録したコンピレーションアルバム「punch the monkey」に収録されている1曲。
最も有名な、大野雄二によるルパンのセカンドシリーズからの曲ではなく、ファーストシリーズのオープニングテーマをリミックスしたものです。
原曲の良さを活かしつつ、更にかっこよく、ごきげんなナンバーです。
6 スムース・エース – これから逢いに行くよ。(2004)
アカペラ・コーラスグループ、スムース・エースの曲。
この曲も一聴して小西康陽だとわかるサウンドですが、少し切なく、おしゃれで疾走感のあるピチカート・ファイヴっぽい曲で、バート・バカラックや南米のアルデマロ・ロメロなんかを感じさせる小西康陽の特徴の一つである路線です。
爽やかながら胸にしみる曲です。
今回は、「渋谷系」として1時代を築き、JPOP界に大きな影響を及ぼした小西康陽を取り上げました。
先ほど取り上げたm-floの他、「パフューム」「きゃりーぱみゅぱみゅ」などをプロデュースする「中田ヤスタカ」も小西康陽からの影響を公言しており、自身のグループである「カプセル」の初期作品ではその影響がはっきりと色濃く出ています。
次回はそんな小西康陽の自身のグループ、ピチカート・ファイヴを取り上げたいと思います