〈連想第26回〉
前回取り上げた「カル・ジェイダー」は日本では一般的には馴染みがないですが、アメリカでは超有名人、大ヒットミュージシャンという感じらしいです。
こういう日米での知名度のギャップってたくさんありますね。
カル・ジェイダーはアメリカではかなり知名度が高いというだけでなく、ヴィブラフォンとラテンのフィーリングが、ヒップホップとすごく相性が良い、というのがたくさんサンプリングされている理由だと思います。
今回はそんなカル・ジェイダーをサンプリングしたヒップホップを、元ネタと並列しながら5選します。
1 A Tribe Called Quest – Midnight Maraoders Tour Guide(1993)
「ア・トライブ・コールド・クエスト」の名盤サードアルバム「midnight marauders」のイントロです。
このアルバムは、このイントロだけでなく、ところどころに入るスキットに、繰り返しこのカル・ジェイダーの心地よいサウンドが使われています。
これが、このアルバム全体に漂う心地よさを更に相乗させています。
元ネタは「the prophet(1968)」というアルバムに収録されている「aquarius」という曲です。
この心地よさはカル・ジェイダーの中でもトップといえるほどで、ファーストクラスのフライト気分です。
2 The Pharcyde – Groupie Therapy(1995)
時は違えど、カル・ジェイダーと同じカルフォルニアで活動するグループ、「ザ・ファーサイド」の名盤セカンドアルバム「labcabincalifornia」に収録されている曲。
プロデュースは「d.i.t.c.」の「ダイアモンドD」です。
全体的に涼しげで夏っぽい雰囲気が漂うこのアルバムは、有名な、「スタン・ゲッツ」をサンプリングした「runnin’」が収録されていますが、この曲はその1つ前の曲で、イメージが連続している感じでとても統一感、バランス感があります。
元ネタは「soul burst(1966)」というアルバムに収録されている「the bilbao song」の1:15あたりを45回転でサンプリングしています。
3 Gang Starr – Full Clip(1999)
「ギャングスター」の「full clip:a decade of gang starr」というベストアルバムに新曲として収録された曲。
プロデュースの「DJプレミア」得意のチョップが炸裂した職人芸全開のトラックです。
元ネタは「cal tjader sounds out burt bacharach(1969)」という、タイトルのとおり「バート・バカラック」の曲を集めたアルバムに収録されている「walk on by」の0:26あたりをチョップしてます。
こんな癒やし系の曲をサンプリングして、こんな男気あふれるかっこいい曲に!
これがヒップホップの醍醐味、面白さの一つです。
4 J Dilla – The 1997 Batch Track 12(1997)
32歳で病死した天才プロデューサー「ジェイ・ディラ(=ジェイ・ディー)」が完全未発表で自作のデモテープにのみ残されていた1997作のループ集からの1曲。
元ネタはアルバム「live at the funky quarters(1972)」に収録されている「davito」の冒頭です。
フィルターをかけまくって、くぐもらせてフワフワな感じにした上ネタに、深く沈んだシンセベース、カチカチな硬質ドラム、というジェイ・ディラの典型的なプロダクション。
原曲のドリーミーさがヒップホップのトラックで再構築され、ドリーミーさがより増しています。
デモにループのみ残っていて曲にすらなっていなかったのに、感動的なほどかっこいいです。
5 The Alkaholiks – Daaam! Remix(1995)
こちらもカルフォルニアのグループ、アルカホリックスのアルバム「coast Ⅱ coast」に収録されている曲の、d.i.t.c.のバックワイルドによるリミックスバージョンです。
アルバム「plugs in(1969)」に収録されている「morning mist」という曲の冒頭が使われています。
ファーサイドも「labcabincalifornia」に収録されている「the pharcyde」という曲でこの曲を使ってます。
今回はカル・ジェイダーをサンプリングした曲を取り上げました。
カル・ジェイダーは原曲もサンプリングされても本当に最高です。
カル・ジェイダーをサンプリングした曲はまだまだたくさんあるので、また別の機会に取り上げたいと思います。
次回は、今回紹介したカル・ジェイダーと同じカルフォルニアで活動したグループであり、何度もカル・ジェイダーをサンプリングした、ファーサイドを取り上げようと思います。