ザ・ファーサイド〈後編〉9選

ヒップホップ
引用元:"20130131 Pharcyde-28" by marniejoyce"
ジェイ・ディラジャズソウルヒップホップ

〈連想第28回〉

前回取り上げた「ザ・ファーサイド」の1992年のファーストアルバム「Bizarre Ride II the Pharcyde」は全曲素晴らしい名盤でしたが、1995年のセカンドアルバム「Labcabincalifornia」もまた全曲素晴らしい名盤です。

ファーストアルバム同様、シングルカットされた曲のリミックスがまた素晴らしく、12インチ版含めて本当に全てが名曲です。

このセカンドアルバムの特徴としては、プロデュースの多くを「ジェイ・ディー(=ジェイ・ディラ)」が手掛けるようになったことです。

32歳で病死した天才プロデューサーの「ジェイ・ディー」は、実質このアルバムで世に出たと言えると思います。

当初は「ア・トライブ・コールド・クエスト」の「Qティップ」がプロデュースするはずだった枠だったのですが、多忙のため才能あふれる将来有望な「ジェイ・ディー」を推薦し、代わりにプロデュースしたという経緯がありました。

こうして出来上がった名盤セカンドアルバム「Labcabincalifornia」ですが、その後メンバーが次々と脱退するなど活動は縮小されていきました。

今回は、「ザ・ファーサイド」後編と称して、2ndアルバム以降の曲で「カル・ジェイダーをサンプリングしたヒップホップ」の回で取り上げた「groupie therapy」と「pharcyde」を除いた曲から9選します。

1 Bullshit(1995)

2ndアルバムの1曲目。

このアルバム全体の印象を象徴するようなジャジーで涼し気な曲です。

プロデュースは「ジェイ・ディー」で元ネタは「ゲイリー・バートン」の「sing me softly of the blues」の冒頭です。

2 The Hustle(1995)

セカンドアルバムに収録されている、涼しげで疾走感あふれる曲。

プロデュースはメンバーの1人である「ブーティ・ブラウン」で、元ネタは「ロイ・エアーズ」の「you send me」の0:53あたりです。

この「ロイ・エアーズ」もとても良い曲です。

このアルバムは「カル・ジェイダー」に「ゲイリー・バートン」に「ロイ・エアーズ」と、サンプリングにヴィブラフォン奏者が目白押しで、コンセプトがはっきりしていますね。

イントロのスキットは「フレディ・ロビンソン」「fool of you」の冒頭です。2

3 She Said(Jay-Dee Remix)(1995)

セカンドアルバムに収録されている曲のリミックスです。

オリジナルもとても良いのですが、このジェイ・ディーリミックスがなんとも深みがあってかっこいいです。

元ネタは「ガトー・バルビエリ」の「el arriero」ライブ版の冒頭です。

4 Drop(1995)

これもセカンドアルバム収録曲。

「runnin’」に次ぐ代表曲の一つでありながら、「runnin’」と同様にジェイ・ディーの出世作の一つで、シングルリリースもされています。

「ドロシー・アシュビー」の「django」を逆回転してサンプリングした曲、それに倣ってPVも逆回しで撮影したとても面白い映像になっています。

メイキング映像もありましたのでリンクします。緻密に作られているのがわかります。

ちなみにビートマイナーズのリミックスもとても良いです。

5 Y? (1996)

2ndアルバム収録の涼しげでグルーヴィーな一曲です。

アルバム収録のオリジナルバージョンはメンバーの「ブーティ・ブラウン」がプロデュースしていますが、シングルリリースされた「drop」のB面には「ジェイ・ディラ」のリミックスが収録されています。

ジェイ・ディラバージョンの元ネタは、「ディジー・ガレスピー」「groovin’ high」の0:50あたりです。

6 Runnin’(1995)

ファーサイド最大のヒット曲で最も有名な代名詞的な代表曲。

「ルイス・ボンファ」の涼しげなボサノヴァギターにズッシリくるカチカチドラムをのせた、ジェイ・ディーの典型プロダクションでありながら、ジェイ・ディーにとっても代名詞的な出世作。

ヒップホップ史上においても定番ソングの一つと言えるでしょう。

元ネタは、「スタン・ゲッツ&ルイス・ボンファ」「Saudade Vem Correndo」の2:04です。

7 Devil Music

メンバーの「ファット・リップ」プロデュースの一曲。

地味ながら涼しげなアルバムの印象を高めるのに一躍買っています。

8 The E.N.D

アルバムのラストを飾る曲です。

一貫して涼しげな印象のアルバムのラストに相応しい最高に涼しげな曲。

アルバム通しての統一感がすごいです。

9 Frontline(2000)

メンバーから「ファット・リップ」が脱退して3人での活動となったサードアルバム「plain rap」からのシングル曲。

プロデュースは「d.i.t.c.」の「ショウビズ」で、元ネタは「the les reed orchestra」の「if we lived on the top of mountain」です。

今回はファーサイドの名盤2ndアルバムの曲を中心に9選しました。

数々の名曲を残したファーサイドは、実は「ジェイ・ディラ(この時期はジェイ・ディー)」を世に出す足がかりともなった存在でした。

「ジェイ・ディラ」はこのアルバム後、トライブや自身のグループ、その他たくさんのアーティストをプロデュースすることとなりますが、その活動期間は他界する2006年までのわずか11年という短い期間でした。

というわけで次回は、短い期間に独創的な数々の名曲を生み出した「ジェイ・ディラ」がプロデュースした曲を取り上げようと思います。