DJプレミア⑦〈ハードコアで男気全開のストリングスネタ〉5選

ヒップホップ
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〈連想第103回〉

ヒップホップのレジェンドプロデューサーの一人、DJプレミアのプロデュース曲を連続で取り上げています。

前回はキャッチーなストリングスネタを取り上げましたが、今回は男気あふれるハードコアなストリングスネタを取り上げます。

同じストリングスネタでもだいぶ印象は違いますが、高揚感をもたらすという点では共通しています。

男気あふれるラッパーとの相性がよく、ハードコアでアドレナリンあふれる曲を5選します。

1 KRS One Ft. Truck Turner – Bring It To The Cypher(1999)

男気全開のラッパー代表「ケー・アール・エス・ワン」です。

プレミアとKRSワンのコラボ曲はたくさんの名曲がありますが、この曲はその中でも特に男気溢れる「outta here」と並ぶ、いや、それを凌ぐ程の男気全開のテンション上がりまくりの一曲です。

ラガがかったフロウの「トラック・ターナー」と、ダンスホールディージェーの「バウンティ・キラー」を彷彿とさせるラガフロウがカッコよすぎる「KRSワン」のテンション高いラップのマイクリレーが最高に熱いです。

元ネタは、ヒップホップやテクノの元祖と言われているレジェンドソング「クラフトワーク」「trans europe express」の冒頭から数か所です。

2 M.O.P. – On The Front Line(1999)

男気と言えば「KRSワン」に次ぐ代表格「M.O.P.」の4thアルバム「warriorz」に収録されているシングル曲です。

気持ちが高ぶりアドレナリンが出でるストリングス×M.O.P.の真骨頂的な曲で、M.O.P.のキャリアとしても絶頂の頃にリリースされた最高に熱い曲です。

元ネタは、あのホラー映画の古典として知られる「キャリー」のサウンドトラックから「ピノ・ドナッジオ」「and made god eve」の0:16~の数カ所です。

3 M.O.P. Ft. Kool G Rap – Stick To Ya Guns(1996)

続いてもM.O.Pです。

この曲もまた男らしくて、何かの入場曲のテーマのように勇ましいワンループの曲です。

前回の〈キャッチーなストリングスネタ〉でもM.O.P.を取り上げましたが、プレミアは意識的か無意識かわかりませんが、M.O.P.のトラックにストリングス系を使うことが多いです。

ピアノがどこか繊細でクールな印象を与えるのに対して、ストリングスというのは勇ましい印象を感じさせるのにピッタリなのだと思います。

この曲は2ndアルバム「firing squad」に収録されているシングル曲で、フューチャリングの「クール・ジー・ラップ」のパートもキレキレでいつもながらかっこいいです。

元ネタは、「ブルック・ベントン」「life has its little ups and down」の0:50~です。

4 Jay-Z – A Millon And One Question Premier Remix(1998)

ヒップホップ界のスター中のスター「ジェイ・ズィー」は、初期の頃からメインストリームとアンダーグラウンドのバランスをうまくとって、両睨みでキャリアを歩んできました。

キャラクター的には硬派でリリシストな「ナズ」のほうがむしろポップ路線だった感もあります。

この曲は、途中でトラックが変わるという変わった曲で、前半はピアノをチョップしたこの頃のプレミアのお箱のような高クオリティーなトラックなのですが、後半2:24~は一転、ハーコーなアンダーグラウンド路線となり、ストリングスのミニマムループが激渋でめちゃめちゃかっこいいトラックになります。

こういう曲をリリースするあたり、「ジェイ・ズィー」のバランス感覚と元々持っているストリート感をも兼ね備えた死角のないスーパーラッパーだなと感じます。

元ネタは、映画「エアポート’75」のサウンドトラックから、「ジョン・カカヴァス」「suspense,approach,and landing」の1:27です。

5 Gang Starr – Soliloquy Of Caos(1992)

自身のグループ「ギャング・スター」の名を上げた名盤3rdアルバム「daily operation」に収録されている曲。

プレミアのスタイルがチョップ&フリップとして定着する以前のスタイルの1つとして、究極の「ミニマムワンループ」がありました。

そのスタイルが全面的に打ち出されたのがこのアルバムで、その中でもこの曲はその代表格です。

プレミアが打ち出したのはネタ感の強いワンループで、それまでもあったホーンなどの鳴り物系をアクセント的にループするのではなく、元ネタの一部分をぶった切って丸々ループさせるというそれまでになかったものでした。

このスタイルは、チョップ&フリップへと発展していきますが、チョップ&フリップとは別のもう一つのプレミアのスタイルとして90年代を中心に多数名曲を遺しています。

この曲は男らしくストイックな印象もあるワンループの隠れ名曲といえるでしょう。

元ネタは、「ブラック・ムーン」が「black smif-n-wessun」で使ったことでも有名な「アーマッド・ジャマル」「misdemeanor」の0:08です。

今回は、前回の「キャッチーなストリングスネタ」に続き、「男気全開のストリングスネタ」を5選しました。

ストリングスネタでも様々な顔があり、レパートリーの広さに唸らされながらも、聴いていてとても楽しいです。

さて次回は、「ピアノネタ」「ストリングスネタ」と来て次は「ベースネタ」を取り上げます。

ベースはブラックミュージックの根幹をなすものであり、最も欠かすことができない存在で、ベースがメインで全面的に押し出される曲というのはブラックミュージックならではだと思います。

そんな黒黒しいブラックネス満点のベースネタを5選します。