〈連想第32回〉
前回まで連続して「ジェイ・ディラ」が手掛けた作品を取り上げてきましたが、今回はその躍進のきっかけを作った「ア・トライブ・コールド・クエスト」の4thアルバムを取り上げます。
「ア・トライブ・コールド・クエスト」は、「ジャングル・ブラザーズ」や「デ・ラ・ソウル」などと並び、「ニュースクール」と呼ばれるジャズやソウルなどのネタ感の強い新たなヒップホップの潮流を創り出した第一人者でした。
この流れを組んだアーティスト達の集団を「ネイティブ・タン」と呼び、上記3グループのほか、「ブラック・シープ」、「リーダーズ・オブ・ニュースクール」、「ビートナッツ」、「クイーン・ラティファ」ほか多数のアーティストが所属し、新たな時代の音を創りました。
90年代前半のこの流れをさらにネクストステージへと押し上げた一人が「ジェイ・ディー」=「ジェイ・ディラ」でした。
90年代中後期にはシーン全体としてニュースクール系のサウンドが極まり、さらに新たな潮流としてポピュラー路線がメインストリームとなり、その後世を席巻していきました。
しかしジェイ・ディラはニュースクール路線の流れを組んだ、ジャジー系、スムース系、インスト系のヒップホップを推し進め、そのパイオニア、旗頭的存在として活動を続けました。
そのニュースクールの流れを組みつつ、ネクストステージへの扉を開いたのが、このトライブのフォースアルバムではなかったかと思います。
このアルバムは、「ウマー」という、トライブのQティップとアリ、ディアンジェロ、ラファエル・サディーク、そしてジェイ・ディーという超豪華メンバーで構成されたプロデューサー集団が全曲プロデュースしました。
しかしそのサウンドは、ジェイ・ディーによるものが大半だったと思われます。
この路線をさらに推し進めたのが、トライブのフィフスアルバムというわけです。
というわけで今回はトライブのフォースアルバム「beats,rhymes & life(1996)」から5選します。
1 Jam
アルバム中最もご機嫌でテンションが上がる曲。
元ネタは「howard roberts quarted」の「firty old bossa nova」の冒頭です。
2 Crew
2分弱の短い曲ながらフワフワした浮遊感のある心地良い曲です。
3 Seperate/Together
さらに短い曲ながらこちらもまた浮遊感のある心地良い曲です。
4 The Hop
ジャジーでメロウなネタ感の強いグルーヴィーな曲。
元ネタは「henry franklin」の「soft spirit」の冒頭です。
5 Word Play
カチカチドラムの、ジェイ・ディラ感の強い曲。
元ネタは「rodney franklin」の「the watcher」です。
〈番外編〉Phife – Dear Dilla
最後に番外編として、トライブの曲でもなく、ジェイ・ディラのプロデュースでもないのですが、トライブのメンバーのであるファイフの2014年のソロ曲を紹介します。
これはファイフが、他界したジェイ・ディラに向けてその思いをラップした感動的な曲です。
この曲(2014)のリリース後、間もなくしてファイフ自身も病気により他界しました(2016)。
PVを見ていると、「天国で再会できているといいな」、そんな思いが込み上げてきて、胸が熱くなります。
今回はトライブのフォースアルバムを取り上げました。
ファーサイドの回から連続してずっとジェイ・ディラの曲が続きましたので、ここで一旦打ち切りにしたいと思います。
次回は、番外編で紹介したファイフからの繋がりで連想します。
ファイフには従兄弟がいて、その従兄弟もまた別グループでラッパーとして活動していました。
それは、ネイティブ・タン一派で、トライブと同時期の90年代初期〜中期に活躍したグループ、fu-shunickens(フー・シュニッケンズ)です。
というわけで次回はネイティブ・タン一派でファイフの従兄弟が所属するグループ、フー・シュニッケンズを取り上げます。