ガーシュイン兄弟 5選

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〈連想第54回〉

前回は、ハリウッド黄金時代のミュージカルなどを多く手掛け、たくさんのスタンダードナンバーを遺した「ジェローム・カーン」を取り上げました。

今回取り上げるガーシュイン兄弟は、兄アイラが作詞を、弟ジョージが作曲を担い、「コール・ポーター」や「ジェローム・カーン」と並び、数多くのスタンダードナンバーを残しました。

弟ジョージはクラシック作曲家としても有名なあの「ガーシュイン」です。

38歳で脳腫瘍で亡くなる直前まで、名曲、スタンダードナンバーを書き続けていました。

フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースの映画「shall we dance」、邦題「踊らん哉」の挿入歌は、全てガーシュイン兄弟により書き下ろされたものですが、この映画が公開された年にジョージは亡くなりました。

今回はそんなガーシュイン兄弟の曲を5選します。

1 They Can’t Take That Away From Me

まずは前述した映画「踊らん哉」からのスタンダードナンバー、邦題「誰にも奪えぬこの想い」です。

こちらは1937年の映画中のフレッド・アステアによるオリジナルがやはりとても良いです。

そしてこの曲は、アステアとロジャースが1939年にコンビ解消後一度だけ共演した1949年の映画「ブロードウェイのバークリー夫妻」で10年越しにもう一度取り上げられました。

2 S’wonderful

続いてもミュージカル映画のオリジナル映像からです。

ガーシュイン兄弟の代表作、ミュージカル「巴里のアメリカ人」を1951年に映画化したアカデミー映画からの一幕です。

もちろん全曲ガーシュインのこの映画は、「雨に唄えば」で有名で、アステアとも共演している「ジーン・ケリー」が主演です。

この映画はアカデミー賞最多6部門受賞した、「ヴィンセント・ミネリ」監督の金字塔的映画で、現在でもミュージカルとして何度も再演されています。

その中からの一曲、この「スワンダフル」は、アステアも「オードリー・ヘップバーン」と共演した「パリの恋人」で取り上げたほか、色々なミュージシャンが何度も取り上げているスタンダード中のスタンダードナンバーです。

共演はフランスの俳優、歌手、ダンサーの「ジョルジュ・ゲタリー」です。

3 I Got Rhythm

続いても「巴里のアメリカ人」から、こちらも大スタンダード曲「アイ・ガット・リズム」です。

1931年に作曲されたこの曲は、今なおCMや映画など様々な場面で耳にすることも多いのではないでしょうか。

ジョージ・ガーシュイン自身が演奏する貴重な映像が残っています。

また、2021年のショパンコンクールで素晴らしい演奏を聴かせてくれて、年末には紅白歌合戦にも出場するなど、最近活躍目覚ましいユーチューバーピアニスト「かてぃん」こと「角野隼人」さんがこの曲でとても面白い演奏を披露してくれています。

比較して視聴してみると、時代を超えて受け継がれ繋がっている感じがしてとても感慨深いです。

4 But Not For Me

1930年のミュージカル「girl crazy」の1曲であるこの曲は、最初に「ジンジャー・ロジャース」が歌い、後年には「エラ・フィッツジェラルド」がグラミー賞を取るなど、様々なミュージカル、映画、ジャズなどで歌い継がれているスタンダードナンバーです。

そしてこの曲の代表格と言えば「チェット・ベイカー」ではないでしょうか。

一般的に、この曲「but not for me」か「my funny balentine」がチェット・ベイカーの代名詞的な曲ではないかと思います。

1954年の大定番アルバム「chet baker sings」に収録されています。

5 The Man I Love

この曲は、ミュージカル「lady be good」のために書かれましたが採用されず、1927年のミュージカル「strike up the band」が初出となりました。

当時から、ミュージカル自体よりもこの曲が単体でヒットし、その後ジャズスタンダードとなり脈々と受け継がれています。

ジャズピアノソロの先駆者でありヴィルトゥオーゾのアート・テイタムによる演奏です。

半盲(ほぼ全盲)だったアート・テイタムは、不世出のヴィルトゥオーゾで、そのテクニックは、多くの人、特に現役の超一流ピアニスト達を驚かせました。

この「ザ・マン・アイ・ラブ」も、ゆっくりとしたムーディーな曲なのに、超絶技巧曲のようになっています。

演奏年は不明ですが、1968年にリリースされたアルバム「piano starts here」に収録されています。

今回はアメリカ音楽史におけるスタンダードナンバーを量産したガーシュイン兄弟を取り上げました。

アメリカのミュージカル、映画、ポップスなどに巨大な足跡を残したガーシュイン兄弟でしたが、弟のジョージは、あの有名な「rapsody in blue」を作曲したクラシックの作曲家でもありました。

次回は、弟ジョージ・ガーシュインによるクラシック作品を取り上げようと思います。