すぎやまこういち②〈ドラゴンクエストⅠ・Ⅱ前半〉5選

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〈連想第66回〉

ドラクエの音楽は、深く心に刻まれいつまでも輝きを失うことなく、幼い頃の幸せな記憶とともに蘇り、聴くたびに涙が溢れます。

小学校の給食時間に何気なくかかったオーケストラバージョンを聴いて稲妻が走り、持ち主だった同級生に頼み込んでカセットテープを借り、その後誕生日にはあらためてプレゼントとして新品を買ってもらいました。

何度も聴いてはテンションが上がり、クラシック音楽、オーケストラ、ひいては音楽そのものの素晴らしさ、楽しさが、とても素直に身体に染み込みました。

それ以降、「能動的に音楽を聴く」ようになり、そのこと自体が、楽しみ、趣味になっていきました。

音楽を心から好きになれたことは、とても幸せなことだと思っています。

すぎやまこういち先生のドラクエの音楽は、間違いなくそのきっかけ、下地になっていて、そのことを心から感謝しています。

すぎやまこういち先生は元々根っからのゲーマーで、エニックスのファミコンソフト「森田将棋」をやっていたら、物申したいところがあったのでエニックスにアンケートハガキを書いたのですが、投函せずに放置していたところ、たまたま奥様がそのハガキを投函しました。

ハガキを受け取ったスタッフは、名前がひらがなだったので小学生だと思い、「まさかあのすぎやまこういちじゃないよね!?」と半信半疑でコンタクトをとったところ本人だったのでびっくり!というエピソードがあります。

このとき既にドラクエⅠはほぼ完成していたのですが、内部スタッフが作った音楽に対してダメ出しが入り、「プロによる格式のある音楽」を求め、すぎやまこういち先生へ依頼することとなったとのことです。

偶然が重なって生まれた奇跡的な出会いと言わざるを得ません。

先生はこれまでの膨大な数を作曲してきた経験、知見から、聞きべりのしない、何度聞いても飽きない音楽を目指して作曲に取りかかりました。

与えられた時間はわずか1週間でした。

しかしそれまでも、「明日まで」などの締切期間での依頼をこなしてきた経験豊かなベテラン音楽職人だった先生はたじろがず、わずか一週間でドラクエⅠの全曲を書き上げたのです。

先生は作曲されるにあたって、ゲームの世界観を聞いたところ、「中世ヨーロッパ騎士物語風のイメージ」とのことだったため、即座にクラシック音楽をベースにすることにしました。

そして誰もが知るあのドラクエのテーマ曲が、わずか5分で完成したのです。

そのことを当時55歳だった先生は「5分ではなく、55年と5分。」と、ピカソの言葉を引用して常々言われています。

そのとおり、それまでの55年間の作曲人生の下地があったからこそ5分で生まれた名曲だったのです。

そんな奇跡のようなエピソードの連続のよって生まれたドラクエの音楽。

シリーズが進むにつれてその曲数やスケールは大きくなっていき、数々の名曲が生まれていきます。

そして伝説へ…

そんなすぎやまこういち先生のドラゴンクエストシリーズから、名曲の数々を複数回に渡って取り上げていきます。

ゲーム版とオーケストラ版どちらも素晴らしいので両方をリンクします。

1 序曲(Ⅰ〜Ⅲ)

全ての始まり。5分で作ったドラクエのテーマ曲です。

よく、ワーグナーの「ニーベルングの指環」から着想を得た、と言われてきましたが、それはご本人が否定されています。

しかしオーケストラ版の中間部分は、ワーグナーを連想させるような響きも感じられる、威風堂々とした曲です。

2 広野を行く(Ⅰ〜Ⅲ:フィールド)

物悲しさ漂うフィールドのテーマ。

当初スタッフは勇ましい感じの曲をイメージしていたので、曲を聴いたとき「何か寂しげで元気がない…」というような感想を持ったそうですが、実際プレイしてみると、「はまってる!これしかない!」と感じたそうです。

先生は、「一人で見知らぬ世界へ旅に出る孤独や不安を感じさせるようにした」と言われています。さすがです。

3 遥かなる旅路・果てしなき世界(Ⅱ:フィールド)

Ⅱのフィールドのテーマ。

Ⅰの時の孤感・不安感に加えて、勇ましさがプラスされたようなかっこいい曲「遥かなる旅路」。

そしてもう一つのフィールド曲は、ムーンブルクの王女が仲間になって、パッと明るくなり未来が開けていくような曲調に変わり、「行くぞ!」という決意が感じられるシリーズ屈指の名曲「果てしなき世界」です。

転調してBメロに切り替わるところ、心が開放されるような感動と、幸せな記憶とが相まって、胸が締め付けられるようにぐっときます。

Ⅱの名曲率は凄まじく、想い出補正もあるのか聴くたびに涙が溢れそうになってきます。

4 戦い(Ⅱ:戦闘)

戦闘のテーマ曲はシリーズ通して名曲が多いのですが、このⅡの「戦い」もまためちゃめちゃかっこいい曲です。

実プレイ体験と相まって切迫感・緊迫感があります。(Ⅱはシリーズ中ダントツで難易度が高く、その要因は強すぎる敵たち…)

5 恐怖の地下洞・魔の塔(Ⅱ:洞窟・塔)

Ⅱの洞窟と塔はファミコン版がカッコ良すぎます。

特に塔のテーマは、はっきり言って毎回聴くたびに鳥肌立つくらいかっこいいです。

斬新というか、センスがすごくてとにかく本当にかっこいいです!

Ⅲの幽霊船に若干通ずるところがあるように感じますが、他にはあまりないタイプの変わった曲です。

シリーズ屈指の異色なかっこいい曲です。とにかくファミコン版がかっこいいです!

今回はドラクエシリーズ初回ということで、まずはここまでにします。

とにかく名曲のオンパレードで、当時ゲームをやりながらこんないい曲を聴いていたなんて、何て素晴らしい情操教育だったんでしょう!

ドラクエは日本人の共通言語、共通体験です。

次回以降、引き続きドラクエの名曲を取り上げていきます。