すぎやまこういち⑥〈ドラゴンクエストⅣ・前編〉5選 

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〈連想第70回〉

連続して取り上げているドラクエシリーズの、今回はⅣ「導かれし者たち」から、前編として5選します。

Ⅰ〜Ⅲまでは「ロトシリーズ」でしたが、Ⅳ〜Ⅵまでは「天空シリーズ」になります。

5章からなるそれぞれのメンバーの個別エピソードを経て、それぞれが「導かれて」仲間になるという壮大なストーリー。

そして戦闘にはAIが搭載されるという画期的かつ最先端技術が取り入れられ、大幅にスケールアップしたゲームと共に、音楽もまた数、構成、共にスケールアップしました。

Ⅲの時の全体的に明るく勇ましい感じだったのが一転、全体的に寂しさ、物悲しさを感じさせる曲が多い印象です。

それは主人公の悲しすぎるエピソードから始まるストーリーとの関連ももちろんあると思います。

オーケストラバージョンも更にスケールアップしています。

今回も、全曲素晴らしい中から厳選して取り上げていきます。

※すぎやまこういち先生は、2021年9月30日、敗血症性ショックのため90歳でご逝去されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

1 勇者の仲間たち・勇者の故郷・馬車のマーチ(Ⅳ:フィールド)

ドラクエⅣは、5章からなる個別エピソードのキャラクターごとにフィールドのテーマが用意されているというとても面白い設定でした。

そしてこれがまた、それぞれのキャラクターのイメージにピッタリ、と言うか音楽がそのキャラクターのイメージを作っていたという一面もあったと言っていいくらい本当にキャラの人間像・背景を表していました。

しかも、それでいてどれも甲乙つけ難い名曲なんです。

なのでここではその全曲を取り上げたいと思います。

曲名は↓のとおりです。

第1章:ライアン「戦士はひとり征く」

第2章:アリーナ・ブライ・クリフト「おてんば姫の行進」

第3章:トルネコ「武器商人トルネコ」

第4章:ミネア・マーニャ「ジプシーの旅」

第5章:勇者「勇者の故郷」

仲間と合流「馬車のマーチ」

さらにプラスして、オーケストラ版では、名曲として名高い第4章の戦闘テーマ「ジプシーダンス」もあわせて演奏されているので、ファミコン版もリンクします。

なお、オーケストラ版もリンクが2つに分かれています。

2 王宮のメヌエット(Ⅳ:城)

今作も過去作と同路線のバロック調の格式高い雰囲気の曲です。

Ⅱのまったり系とも、Ⅲの勇ましい感じとも違う、威厳のある雰囲気という感じでしょうか。

ちなみにこの曲の中間部分、「魔女の宅急便」の「海が見える街」の中間部分に似てるなー、と聴くときいつも思ってしまいます。

3 街でのひととき(Ⅳ:街)

Ⅱ・Ⅲの明るく賑やかな印象とは違い、ゆったり穏やかでくつろぐ印象の街のテーマです。

冒頭のメロディーが、Ⅱの「この道わが旅」のBメロに似ています。

オーケストラ版ではカジノの音楽も連続して演奏されています。

そしてこのカジノのテーマは、Ⅲの「冒険の旅」や「おおぞらをとぶ」に続き、トヨタアクアのCMでも使われています。

4 戦闘〜生か死か〜(Ⅳ:戦闘)

Ⅱ〜Ⅴまでの戦闘曲は、いずれもかっこいい系の名曲ですが、このⅣのかっこよさは特に際立っています。

煽られる感じ、焦らされる感じは、ゾーマのテーマに通ずるものがあり、迫りくるような迫力がある曲です。

ゾーマのテーマもそうなのですが、拍数が普通(3/4とか4/4)ではなく、かなり変則的な変わった拍数を使っていて、それが効果的なのかもしれません。

転調してBメロに変わったところの迫力、疾走感が特にめちゃめちゃかっこいいです。

5 恐怖の洞窟・呪われし塔(Ⅳ:洞窟・塔)

名曲が多い「洞窟・塔」のテーマですが、Ⅳもまたトリッキーながら美しい名曲です。

特に「塔」は今作もまたかなりかっこよく美しく、近代音楽風の印象的な曲となっています。

ちなみにファミコンでは、容量の関係上曲の音が3音しか重ねられないため、「分散和音」を使い、オーケストラ版などではハーモニーとして音が重なっている箇所を、重ねずズラしてプログラムしているのですが、「洞窟・塔」は毎作その傾向が強く、ゲーム版とオーケストラ版でだいぶ印象が違います。

それが、メロディーとベース音の間でひたすら「ピコピコピコピコ…」いってるあの音です。

何が言いたいのかと言うと、あの分散和音の「ピコピコ音」がたまらなく最高なのですが、この曲は特にそうなんです!

他には戦闘曲とかフィールドの曲とかもその傾向があります。

この現象は、ファミコンだった今作Ⅳまでで、スーファミとなったⅤ以降はその制約がなくなり、ピコピコ音でもなくなりました。

オーケストラ版は美しさが際立っています。

今回は色々な面でスケールアップしたドラクエⅣから5選しました。

毎作同じテーマ(街・戦闘・洞窟など)で作曲するにも関わらず、様々なバリエーションを聴かせてもらえて本当に楽しいです。

Ⅳの曲も名曲だらけで、オーケストラ映えする迫力のある曲も多いです。

次回は引き続きⅣの曲から、さらに5選していきます。