〈連想第37回〉
前回取り上げたハードコアなラガヒップホップに続いて、今回はメロウでスムージーなラガヒップホップを取り上げます。
ラガヒップホップと言うよりは、ラガR&Bというほうがしっくりくる感じかもしれません。
レゲエは本当に色々な顔を持っており、ダンスホールdeejayでもシンガーでも、色々なスタイルに合わせて柔軟に対応できることがレゲエ界では重要なこととされています。
90年代はR&Bも世界的に大きな盛り上がりを見せており、その流れを受けてレゲエとR&Bをコラボしたものも多くリリースされました。
今回は、そんな時代背景があった90年代初期〜中期の、スムージーでビートがヒップホップなR&B調レゲエを6選します。
1 Buju Banton – Make My Day(1993)
ハードコア編ではこの曲のリミックスを取り上げましたが、スムース編ではオリジナルバージョンをご紹介します。
ノリに乗ってるイケイケ時代の「ブジュ・バンタン」のアルバム「voice of jamaica」に収録されていてシングルリリースされました。
この曲はハードコア編の暑苦しさとはまた違った、スムース・メロウで涼しげな感じが逆に暑苦しさを感じさせる胸キュンな名曲です。
2 Patra – Workerman(1993)
女性deejay兼シンガーの「パトラ」、アルバム「queen of the pack」に収録されていて、シングルリリースされている代表曲です。
シングルバージョンもスムージーですごく良いのですが、むさ苦しさ漂うアルバムバージョンが、たまらなく胸が熱くなり最高です。
3 Chaka Demous & Pliers – I wanna Be Your Man(1992)
「チャカ・デマス・アンド・プライヤーズ」のアルバム「tease me」からシングルカットされた曲。
非常にスムージーで心地よい曲。夕陽の沈みかけるプライベートビーチでまったりたたずむ…みたいなシチュエーションにピッタリです。
元ネタはal wilson「show and tell」です。
4 C.J.Rewis – Sweet For My Sweet(1994)
一転してゴキゲンでノリノリなナンバー。
かつてはレゲエの一大拠点だったUKのdeejay「シー・ジェイ・ルイス」のデビュー曲で最大のヒットチューンです。
ドリフターズの同名曲をカバーしています。
ちなみにレゲエってほんとにものすごくカバーが多いのですが、この曲もその一つです。
ファーストアルバム「dollars」に収録されています。
5 Shabba Ranks Ft. Queen Latifah – What’cha Gonna Do(1993)
フィメールラッパー、「クイーン・ラティファ」をフューチャーした軽快な曲。
最もヒットしたアルバム「x-tra naked」に収録されているシングル曲です。
爽やかなトラックでむさ苦しく歌うエンペラー「シャバ・ランクス」が最高です。
PVもごきげんで、とても楽しい、踊りだしたくなる曲です。
元ネタの「patrice rushen」「feel so real」がまた最高です。
6 Aswad – Heart Beat(1994)
最後は、歌ものです。
ダブやラヴァーズロックのUKの大御所「アスワド」のヒットチューン。
アルバム「rise and shine」に収録されていて、シングルリリースはされていないのに、なぜか代表曲的な人気があります。
夏の熱い日差しと青春を想起させる胸キュンメロディーが最高です。
今回は、ラガヒップホップ〈スムース編〉と称して、ビートがヒップホップなR&B寄りのレゲエを取り上げました。
さてこの時代は、70年代中期から始まったダンスホールレゲエの一本の流れがピークに差し掛かった時期でもありました。
その後、90年代後半から2000年以降はヒップホップやR&Bもどんどん違ったかたちに変化していきますが、それ以上にダンスホールレゲエは大きく様変わりしていきます。
次回は、様変わりする前の、初期ダンスホールからの流れがピークに達した90年代初期〜中期の、本場ジャマイカのダンスホールレゲエを取り上げます。