フレッド・アステア〈ダンス編〉6選

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〈連想第51回〉

前回は「フレッド・アステア〈歌編〉」として、アメリカエンターテインメント史上のレジェンド、「フレッド・アステア」のシンガーとしての側面にスポットを当てて取り上げましたが、今回は真骨頂であるダンスにスポットを当てて取り上げます。

フレッド・アステアは他の追随を許さないダンスのヴィルトゥオーゾであり、テクニックのみならず、そのエレガントさ、軽やかで気品に溢れる身のこなし、さらにピアノやドラムのテクニックも卓越しており、万能かつ創造性あふれるエンターテイナー、クリエイターでした。

音楽一家に生まれ育ったアステアは、小さい頃から姉と共に踊り、ミュージカル舞台俳優として映画デビュー前より名を馳せていました。

そんなアステアの生み出した数多くのダンスのスタイルは、同時代以降のダンサーに波及し今なお色褪せることはありません。

今回はそんなアステアの名ダンスシーンから6選します。

1 Pick Yourself Up(1936)

アステア&ロジャースの人気絶頂だった頃の映画「swing time」、邦題「有頂天時代」の一幕です。

映画のタイトルそのままに、2人がノリに乗っている時期で、歌もダンスも本当に充実した最高のエンターテイメント映画となっています。

私は昔、数あるアステアの名画、名シーンの中でも、このシーンが1番大好きで繰り返し何度も見ていたのですが、最近になってYouTubeにアップされているのを知り感動しました。

そしてこの動画の再生回数が1,700万回超えなのを見てびっくり!嬉しさが込み上げてきてテンションが上がりました。

「やっぱりこのシーン最高ですよね!」という気持ちです。

アステア名シーンランキングみたいな動画でも1位だったりしてます。

本当に、楽しいし、すごいし、2人のコンビの絶頂とも言える素晴らしいシーンだと思います。

曲はジェローム・カーンのスタンダードナンバー「ピック・ユアセルフ・アップ」で、もちろんこれが初出です。

2 Waltz In Swing Time(1936)

同じく「有頂天時代」から、今度はワルツです。

エレガントでありながら、かなりアグレッシブなワルツとなっていて、何だか夢見心地なハイライトの1つです。

曲は同じくジェローム・カーンです。

3 The Story Of Vernon And Irene Castle(1939)

伝記的映画「カッスル夫妻」から、夫妻が人気を博して様々なダンスを披露するシーンの一部です。

ファッションもダンスも音楽も当時(1910年代)のもので、1939年の映画公開当時よりさらにクラシカルで、逆に新鮮です。

ノスタルジックな雰囲気を感じます。

4 The Continental(1934)

「the gay divorcee」、邦題「コンチネンタル」から、タイトルナンバーの「ザ・コンチネンタル」にのせた、アステア&ロジャース初主演映画のハイライトダンスシーンです。

二人のコンビ映画中後半のアグレッシブさはあまりありませんが、色々と工夫されていて観ていて本当に楽しいです。

ハリウッド=銀幕が、当時の観客にとっては本当に夢のような世界だったんだろうな、という想像が頭をよぎります。

5 Shall We Dance(1937)

「shall we dance」、邦題「踊らん哉」のエンディグです。

後年マイケル・ジャクソンがこの映画をモチーフにしたライブ演出を行いました。

アステアのソロダンスがかっこよくてしびれます。

曲はガーシュイン兄弟です。

6 You Were Never Lovelier(1942)

リタ・ヘイワースと共演した「晴れて今宵は」から、アステアのソロダンスのパートです。

このコミカルで楽しいダンスも、アステアの持ち芸の1つです。

ヴィルトゥオーゾぶりを発揮しつつ、あくまで見ている人に楽しんでもらおうとしているところが、真のエンターテイナーである所以と言えるでしょう。

今回は、フレッド・アステアのダンス編を6選しました。

今に続く「ミュージカル映画」というものの原点であり、礎を築いたのは、間違いなくこのフレッド・アステアであったと言えるでしょう。

この頃のミュージカルを主とした映画音楽は、クラシックとジャズが融合した何とも言えないエレガントな音楽で、ハリウッド=夢の世界という印象を与えるのにものすごく大きな役割を果たしていたと思います。

たくさんのスタンダードナンバーが生まれたこの時代、「コール・ポーター」、「ジェローム・カーン」、「ガーシュイン兄弟」など、素晴らしい作曲家たちが才能を発揮していました。

次回は、そんな作曲家たちの中から、まずはコール・ポーターのスタンダードナンバーを取り上げたいと思います。