〈連想第20回〉
前回取り上げたアルデマロ・ロメロは同時代のアメリカンポップスやブラジル音楽と無縁ではありませんでした。
同時期にブラジルで活躍していた代表的な一人に、36歳で亡くなったボサノヴァ・MPBのシンガー、エリス・レジーナがいます。
エリス・レジーナは、ジョアン、アストラッド・ジウベウト夫妻や同時期に活躍したマルコス・ヴァーリなどのような脱力系ではなく、初期の頃はボサノヴァというよりはジャズサンバ、サンバカンサォンの趣が強く、アニタ・オデイを連想させる雰囲気、後年は同世代のジョイスを連想させる雰囲気、そんな印象があります。
ボサノヴァからMPBへの橋渡し的な時代を担った、はつらつとした元気さと内省的な一面を併せ持つシンガー、今回はそんなエリス・レジーナから4選します。
1 in london(1969)
代表的なアルバム「in london」から、1曲目に収録されているタイトル曲。
エリス・レジーナの印象はまさにこの曲です。
アントニオ・カルロス・ジョビンの曲をサンバ色強めで軽快に伸びやかに歌い上げています。
2 aquas de marco(1974)
アルバム「elis & tom」に収録されている、これもジョビンの曲。
トム・ジョビン(=アントニオ・カルロス・ジョビン)とのデュエット曲で、邦題は「3月の雨」。
二人の掛け合いがとても落ち着いていて微笑ましく、とても心地よいMPBです。
3 pororo popo(1962)
セカンドアルバム「poema de amor」に収録されているサンバ・カンサォンな曲。
初期の頃のほうが逆に落ち着いていてじっくり聴かせる、メランコリックな1曲です。
4 se voce pensa(1969)
小西康陽、アルデマロ・ロメロも録音したナンバーで最大のヒット曲、アルバム「in london」に収録されています。
TV番組風のライブ映像がありました。
拳効きまくりの迫力ある歌声で、パワフルな印象です。
今回は、ボサノヴァのムーブメント後の60年代から70年代を駆け抜けたブラジルを代表する女性シンガーであったエリス・レジーナを取り上げました。
次回は、同時代の先端を駆け抜けた、MPBの代表的男性シンガー、マルコス・ヴァーリを取り上げます。