〈連想第25回〉
前回はウエストコーストジャズの代表格の一角である「デイブ・ブルーベック」とその盟友「ポール・デズモンド」を取り上げましたが、今回は同じ時代に同じカリフォルニアで活動した「カル・ジェイダー」を取り上げます。
ヴィブラフォン奏者兼パーカッショニストであるカル・ジェイダーは駆け出しの頃、同じく駆け出しのデイヴ・ブルーベック&ポール・デスモンドと共に演奏し、アルバムも残しています。
ウェストコーストジャズの本場に身を置きながらも、自身はラテンジャズという独自の路線を貫きました。
カル・ジェイダーはラテンジャズの第一人者で、ヴィブラフォンだけでなくパーカッションもやっていたという二刀流のミュージシャンでした。
初期から中期の頃はムーディーでドリーミーでエキゾチックで、フライトや宿泊先をイメージさせる旅感満点のサウンドや、マンボなどキューバのリズムを中心としたごきげんなサウンド、後期は旅感はそのままにソフトロックやソウル、ファンクなど癒やされながらもかっこいいサウンド、という感じでしょうか。
たくさんの素晴らしいヴィブラフォン奏者の中でも、ラテンを全面に出して生涯貫いたのはカル・ジェイダーだけだと思います。
唯一無二の独特の立ち位置で、今も聴くものを癒やし続けてくれます。
今回はそんなカル・ジェイダーから6選します。
1 lullaby in rhythm(1950)
デイヴ・ブルーベックとの共作「brubeck trio with cal tjader」に収録されてる初期作品。
ラテンのリズムはありませんが、カル・ジェイダーのヴィブラフォン自体にラテンを感じます。
2 skylark (1958)
アルバム「latin for lovers」に収録されている数々の名曲の中から1曲。
アルバム通して1曲と言ってもいいほど統一感があり全て名曲。
ものすごいバカンス感で、うなるほど癒やされます。
完全に時間と場所がトリップして南国にいるとしか思えなくなります。
初期カル・ジェイダーの典型で真骨頂な名曲です。
3 midnight sun(1954)
アルバム「manbo with tjader」に収録されているごきげんなナンバー。
全編マンボで、癒やされつつも踊りたくなる、かっこいい曲です。
4 parfidia cha cha(1957)
アルバム「cal tjader」に収録されている曲。
マンボに続いて今度はチャチャチャです。
キューバのリズムは体が自然に揺れ動きます。
5 ginza samba(1958)
次はサンバです。
スタン・ゲッツとの共作「cal tjader-stan getz sixtet」に収録されています。
スタン・ゲッツはこの後ジョアン・ジウベウトと有名な「getz gilberto」でグラミー賞を受賞したり、さらにその後アストラッド・ジウベウトともアルバムを作ったりしますが、それ以前からブラジル音楽が好きだったようです。
ちなみにこのアルバム、ベーシストはビル・エヴァンス・トリオで有名なスコット・ラファロです。
6 manbo inn(1954)
最後は再びマンボです。
キューバの「マリオ・ボーザ」が作曲したラテンジャズの大スタンダードナンバーで、アルバム「ritmo caliente!」に収録されています。
明るくノリノリで楽しいけど、どこか切なさ、儚さを感じる名曲です。
今回はラテンジャズのヴィブラフォン奏者カル・ジェイダーを取り上げました。
実はこのカル・ジェイダー、以前取り上げた「アーマッド・ジャマル」や「ドナルド・バード」と同じく、ヒップホップでサンプリングされまくっているアーティストでもあります。
次回は、カル・ジェイダーの後期作品を中心に、カル・ジェイダーの曲とサンプリングされたヒップホップを並べながら紹介していこうと思います。