〈連想第117回〉
定番ブレイクビーツを連続して取り上げています。
今回は「メルヴィン・ブリス」の「synthetic subsutitution」です。
1973年にリリースされた「reward」という曲のB面なのですが、なんとリリースはこのシングル1枚という非常にマイナーなソウルシンガーでした。
しかし冒頭のドラムのかっこよさから定番ブレイクビーツとなり、1980年代後半から1990年代にかけて多用され、その後も息長く現在に至るまで使われ続けるクラシックソングとなりました。
しかしこの「シンセティック・サブスティテューション」がかっこいいのは冒頭のドラムだけでなく、曲そのものが全編通して哀愁漂うめちゃめちゃかっこいい曲で、リリースがこの一枚というのが惜しまれます。
今回はそんな「メルヴィン・ブリス」の「synthetic subsutitution」使用の曲を12選します。
- 1 Ultramagnetic Mc’s – Ego Trippin’(1988)
- 2 Naighty By Nature – O.P.P.(1991)
- 3 Gang Starr – Dwyck(1992)
- 4 Gang Starr – Cord Of The Street(1994)
- 5 Percee P & Ekim – Now They Wanna See Me(1992)
- 6 Pharcyde – Ya Mama(1992)
- 7 INI – Grown Man Sport(1996?)
- 8 Wu-Tang Clan – Bring Da Ruckuz(1993)
- 9 Mobb Deep – Animal Instinct(1996)
- 10 Boss – Comin’ To Getcha(1993)
- 11 Slick Rick – Venus(1991)
- 12 Ce Ce Peniston – Keep On Walkin’(1992)
1 Ultramagnetic Mc’s – Ego Trippin’(1988)
レジェンドグループ「ウルトラマグネティック・エムシーズ」の代表曲であり、「シンセティック・サブスティチューション」ドラム使いの代表曲でもあります。
この曲がリリースされた1988年はこのドラムが流行った年でしたが、この曲はその中でも先駆的存在で、このドラムと言えばまずこの「エゴ・トリッピン」があげられるでしょう。
元ネタの冒頭のドラム部分と、そのごのピアノ部分を一瞬ぶつ切りでループしているのところに「ヒップホップ」を感じます。
それは、「ブレイクビーツの2枚使い」というヒップホップの根幹に根ざしているもので、この荒削りな感じこそがヒップホップの醍醐味、ライヴ感であるからだと思います。
90年代中盤くらいまでは、このネタのぶつ切り感を意図的に用いた名曲がたくさん生まれました。
後々へも大きな影響を与えたクラシック「エゴ・トリッピン」は、名盤ファーストアルバムに収録されています。
2 Naighty By Nature – O.P.P.(1991)
ポップでキャッチーな大ヒットソング、「ノーティ・バイ・ネイチャー」の代表曲「オー・ピー・ピー」も、このドラム使いの代表格です。
とにかくキャッチーなイメージのこの曲ですが、曲の構成は「ジュース・クルー」を彷彿とさせるとてもシンプルで基本に忠実な曲となっています。
3 Gang Starr – Dwyck(1992)
「ギャングスター」の4thアルバムに収録されているヒットソング「ドゥウィック」です。
当時ノリに乗っていた「ナイス・アンド・スムース」をフューチャーしたノリノリソングで、ドラムは冒頭一小節をシンプルにループしています。
プロデュースはもちろんDJプレミアです。
4 Gang Starr – Cord Of The Street(1994)
続いてもDJプレミアプロデュースの「ギャングスター」の4thアルバムに収録されているクラシックソング「コード・オブ・ザ・ストリート」です。
今度はシンプルなワンループではなく、「テイク・イット・パーソナル」で「イッツ・ア・ニューデイ」を組み替えてオリジナルループを作ったように組み換えています。
5 Percee P & Ekim – Now They Wanna See Me(1992)
サウスブロンクスの実力派ベテランラッパー「パーシー・ピー」のファーストシングルです。
数多くの大物ラッパーとの共演などがありながら、正規リリースはごく僅かで、デビューアルバムはなんと15年後の2007年という不遇のラッパーながら、ジェームス・ブラウン使いのこの曲はニュースクールクラシックとして名高いレア盤です。
6 Pharcyde – Ya Mama(1992)
カリフォルニアのニュースクール系4人グループ「ザ・ファーサイド」のデビューシングルです。
BPM遅めですがシンプルなワンループでノリノリ感が出ています。
ファーサイドの大名盤ファーストアルバムは、このデビューシングルを皮切りに定番ドラムのオンパレードで、定番ドラム使いの教科書的な側面があります。
7 INI – Grown Man Sport(1996?)
ピート・ロック全面プロデュースの「アイ・エヌ・アイ」の一度お蔵入りになり7年の時を経て2003年にリリースされた唯一のアルバムに収録されています。
ブレイクビーツではなく細切れにして完全に打込んでいます。
8 Wu-Tang Clan – Bring Da Ruckuz(1993)
「ウータン・クラン」の伝説のファーストアルバム「エンター・ザ・ウータン」の一曲目です。
脳天とはらわたにガツンとくるスーパーハードコアなこの曲もこのドラムを使っています。
プロデュースはもちろん「レザ」で、フックの声も「レザ」です。
「ゴースト・フェイス・キラー」→「レイクウォン・ザ・シェフ」→「インスペクター・デック」→「ジザ」と続くマイクリレーが激アツでテンションが上がりまくりの男剥き出しの一曲です。
9 Mobb Deep – Animal Instinct(1996)
クイーンズの雄「モブ・ディープ」が大名盤1st、2ndアルバムに続いてリリースされたこれまた大名盤3rdアルバムその名も「hell on earth」の一曲目です。
青いイメージの2ndアルバムに対して赤いイメージのこの3rdアルバムは、そのタイトルとジャケットのイメージどおりのサウンドが全編通して貫かれている、サウンドの統一感が物凄いアルバムです。
ドラムはループではなく打ち込み直しています。
10 Boss – Comin’ To Getcha(1993)
続いても大御所「エリック・サーモン」がプロデュースしたフィメールラッパー「ボス」です。
エリック・サーモンが最もハードでゴリゴリのファンク路線だった1992~1994時期の作品の一つで、女性ながらめちゃめちゃハードコアな一曲です。
11 Slick Rick – Venus(1991)
ストーリーテラーの元祖として名高いレジェンドラッパー「スリック・リック」の「ヴィーナス」です。
高速BPMでベースとドラムのみで疾走する男らしすぎるビートが最高にテンションが上がりアドレナリンが出まくりです。
中盤以降は一転、メロディアスなレゲエ調になりスリック・リックも歌い出し最後には口笛まで吹き出しますが、このゆるいレゲエ調の箇所もまたたまらなくかっこよく胸にぐっときます。
一曲で2つの味が楽しめる曲。名盤2ndアルバムに収録されています。
12 Ce Ce Peniston – Keep On Walkin’(1992)
UKのソウル・R&Bシンガー「シー・シー・ペニストン」の名盤ファーストアルバムに収録されているシングル曲です。
中学生の時ラジオから流れてきたこの曲のかっこよさにしびれ、感動し、衝撃を受け、その後ブラックミュージックの沼へのめり込むこととなっていくきっかけとなった自分自身にとっての記念碑的な一曲で思い入れがあります。
このドラムが使われていることに気づいたのはだいぶあとになってからでした。
とにかく今聴いても全く色褪せることのない最高にかっこいい名曲です。
今回は定番ドラムの中でも使用頻度の物凄く高い「シンセティック・サブスティテューション」を使用した曲を12選しました。
「スカン」と抜ける乾いた破裂音系のスネアが気持ちよく、そしてテンションが上がります。
さて次回は、定番ブレイクビーツの中でも定番中の定番、キング・オブ・ブレイクビーツと言っても過言ではない「impeach the president」を取り上げます。