〈連想第128回〉
レゲエの定番リディムを連続して取り上げています。
今回は、前回の「ファー・イースト」、前々回の「リアル・ロック」と同様、ダンスホールレゲエの歴史の原点とも言えるレジェンドレーベル「スタジオ・ワン」通称「スタワン」からリリースされたものがオリジナルの定番リディム「パーティー・タイム」を取り上げます。
オリジナルは1967年、スタワンから数多くのクラシックをリリースしたコーラスグループ「ヘプトーンズ」が、「サウンド・ディメンション」の演奏、そしてもちろん「コクソン・ドット」のプロデュースによりリリースしたシングル曲でした。
ハネるようなベースラインにより心地良いグルーヴ感が生み出され、とてもドリーミーなロックステディ風の曲となっています。
80年代前期や90年代前期のヒットを中心に、何度もリバイバルされているファウンデーションリディムです。
ちなみに2002年にも、「ビーニ・マン」や「エレファント・マン」などの当時の時の人達によるジャグリング系のリディムとして、同名の「パーティー・タイム」リディムがリリースされていますが、名前以外は全く何の関わりもない別のものです。
今回はそんな定番リディム、スタワン版の「パーティ・タイム」リディムを12選します。
- 1 Sam Cooke – Love Me(Party Time Mix)
- 2 Sugar Minott – Party Time(1976),Only Jah Jah(1983)
- 3 Johnny Osbourne – Rub A Dub Party(1982)
- 4 Yellowman And Fathead – Funky Reggae Party(1982)
- 5 Little Harry – Party Time(1983)
- 6 Early B – New York Party(1984)
- 7 Peter Metro – To You(1984)
- 8 Ini Kamoze – Hot Stepper(1990)
- 9 President Brown – Micky Mouse(1994)
- 10 Vivian Jones – Precious(2008)
- 11 Teacha Dee – Exclusive Song(2012)
- 12 Leroy Sibbles – Party Time(2010)
1 Sam Cooke – Love Me(Party Time Mix)
「ジェームス・ブラウン」「ジャッキー・ロビンソン」と並んで3大ソウルシンガーと呼ばれるオールディーズR&Bのレジェンド「サム・クック」です。
元々は1960年にアメリカでリリースされたシングル曲で、この曲のアカペラをパーティ・タイムと組み合わせたブレンドものです。
作成された経緯や年代は不明ですが、確認できる限りでは2005年にリリースされているようで、自分も特に何の脈略もなくその頃に試聴して「これいいなー!!」と思って7インチ盤を買った記憶があります。
ロックステディや初期レゲエに多大な影響を与えた「サム・クック」だけに、レゲエのオケとの相性は抜群で、まるでオリジナル曲かのようにバッチリハマっています。
中間部の「wow wow〜♪」のところが「浜省」っぽいです。
2 Sugar Minott – Party Time(1976),Only Jah Jah(1983)
前回「ファー・イースト」でも取り上げた、スタワンリバイバルの火付け役でもあるレジェンド「シュガー・マイノット」です。
スタワンのリバイバルのほぼ全てに関わっていると言っても過言ではない「シュガー・マイノット」ですが、この曲もそうです。
スタワンからリリースされた「party time」は、オリジナルである「ヘプトーンズ」のカバーで、プロデュースももちろん「コクソン・ドット」です。
その後、スタワンに並ぶレジェンドレーベル「チャンネル・ワン」のサブレーベル「ヒット・バウンド」からリリースされた「only jah jah」のプロデュースは、レーベルの主催者でレジェンド「ジョセフ・フーキム」です。
どちらのバージョンもシュガーのスイートでドリーミーな歌唱がピッタリハマっていて素晴らしいです。
3 Johnny Osbourne – Rub A Dub Party(1982)
スタワンのサブレーベル「コクソン・レコード」からリリースされた、80年代を中心に活躍した大御所「ジョニー・オズボーン」のヒットシングルです。
「ダンスホールのゴッドファーザー」とも呼ばれた「ジョニー・オズボーン」のこの曲は、「パーティ・タイム」リディムの代表作の一つで、伸びやかで喜びに満ちた歌唱が最高です。
プロデュースはもちろん「コクソン・ドット」です。
4 Yellowman And Fathead – Funky Reggae Party(1982)
俗に言う「ディージェイ第3世代」の筆頭で、80年代前期に一斉を風靡したレジェンド「イエローマン」です。
アルビノとして産まれたイエローマンは、黒人でありながら肌の色は白く髪の毛が黄色だったことからそう名乗り、後年は「キング・イエローマン」とも呼ばれました。
野太く甘いダンディーな「イケボ」系の声と、微笑みながら下ネタリリックを繰り出す組み合わせが絶妙で、エンターテイメント性がとても高いディージェイと言えるでしょう。
脱力した感じの気だるいトースティングが、ドリーミーな「パーティ・タイム」リディムにとても合っています。
合いの手役はこの時期コンビを組んでいた「ファット・ヘッド」です。
↑2と同じくチャンネル・ワン系のレーベル「ヒット・バウンド」からリリースされた名盤「one」に収録されています。
5 Little Harry – Party Time(1983)
イエローマンが優勝した「JCDJ ナショナル DJ コンペティション」に参加し好評を博したことをキッカケにイエローマンと仲が良くなったティーンズディージェイ「リトル・ハリー」です。
↑「funky reggae party」の替え歌っぽい感じの曲で、ラバダブの現場感が伝わってきます。
6 Early B – New York Party(1984)
80年代前半を中心に、レジェンドサウンド「キラマンジャロ」通称「ジャロ」の中心人物として活躍したレジェンド「ドクター」こと「アーリー・ビー」です。
「スーパー・キャット」の名付け親でもあり、そのラガマフィンスタイルはスーパー・キャットに受け継がれています。
↑5と同じくラバダブのライブ感が伝わってくる曲で、聴いていてとても楽しい気分になってきます。
1stアルバム「Four Wheel No Real」に収録されています。
プロデュースは、「ミッドナイト・ロック」レーベルの主催者で、シンガー「ダヴィル」の父親でもある大御所「ジャー・トーマス」です。
7 Peter Metro – To You(1984)
イエローマンと共作するなど80年代前半に活躍したディージェー「ピーター・メトロ」です。
サウンド「メトロ・メディア」を代表する存在で、様々なスタイルを持ち合わせているディージェーですが、この曲では意図的にキーを外す「アウト・オブ・キー」で歌っています。
「テナー・ソウ」が始めた「アウト・オブ・キー」は、80年代に大流行し、たくさんのアーティストが取り入れていますが、これにより何とも言えない浮遊感やプリミティブ感が生み出され、レゲエ特有の怪しさを醸し出しています。
イエローマンたちと共作したアルバム「dedicated to you」に収録されている曲で、プロデュースは80年代前半を中心に数多くの名曲を遺したレーベル「ダイナマイト」の主催者「クライブ・ジャレット」と「ベズウィック’べボ’フィリップス」のコンビです。
8 Ini Kamoze – Hot Stepper(1990)
1994年の「Here Comes The Hot Stepper」が世界的な特大ヒットしたことで有名な「アイニ・カモーゼ」です。
2005年に大ヒットした「ダミアン・マーリー」の「welcome to jamrock」に声ネタとして使われている曲のオリジナル「world a music」も「アイニ・カモーゼ」の曲です。
この曲「hot stepper」は、特大ヒット曲「Here Comes The Hot Stepper」のもととなった曲で、ゆるくこぶしが効いた感じの節回しが何ともクセになります。
プロデュースは、初仕事が「シュガー・マイノット」で、その後「ピンチャーズ」「サンチェス」「スリラー・ユー」らを見出した超重鎮「エークスターミネーター」レーベルの主催者「フィリップ・ファティス・バレル」です。
9 President Brown – Micky Mouse(1994)
90年代半ばに活躍したディージェー「プレジデント・ブラウン」のヒットシングルです。
プロデュースは、「キング・ジャミー」の右腕として活躍したあと「ジャミーズ」からデジタルダンスホールの系譜を受け継ぎ発展させたレーベル「デジタル・ビー」の主催者「ボビー・デジタル」です。
パーティ・タイムは8小節ループで、最初の4小節のあと半音階上がって後半4小節に続くというものですが、この「デジタル・ビー」バージョンは最初の2小節のみのループとなっています。
このパターンでは、他に「エクスターミネーター」からリリースされたものもあり、「ココ・ティー」や「サンチェス」ほか、当時の時の人達によるヒット曲がたくさんあるバージョンです。
10 Vivian Jones – Precious(2008)
UKのラバーズロックの大御所「ビビアン・ジョーンズ」です。
渋くソウルフル、そして優しい歌声で貫禄たっぷりのラバーズシンガーで、どの曲も素晴らしいものばかりで最高ですが、この曲も感動するほど素晴らしく、「やっぱりレゲエって最高!!!」と心の中で叫びたくなります。
「Life Is So Glorious♪」
喜びに満ち溢れていて、聴いていて喜び涙が出てくるパーティ・タイムです。
過酷な歴史と日常がありながらなお喜びに満ち溢れているレゲエという音楽は、本当に奇跡的で神々しいと感じます。
2008年にリリースされたアルバム「reality life」に収録されている曲で、プロデュースは「バリー・オヘア」です。
11 Teacha Dee – Exclusive Song(2012)
「ティーチャ」というアーティスト名のとおり元教師だった「ティーチャ・ディー」です。
フランスのレーベル「アイリー・アイツ」から、UKでラバーズ・ロックを中心にたくさんの大御所達とたくさんの名曲を生みだしたレジェンド「マフィア・アンド・フラキシー」のプロデュースによるリリースされた曲の一つです。
「exclusive girl♪」「no1 girl♪」「champion girl♪」と真面目に何度も繰り返す喜びに満ちた曲でほっこり、そしてグッときます。
12 Leroy Sibbles – Party Time(2010)
最後は、パーティ・タイムのオリジナル「ヘプトーンズ」のメインボーカル「リロイ・シブルズ」によるセルフカバーです。
オリジナルよりもパワフル、そしていぶし銀の味わい深さ、優しくスイートな歌声…
最後にタオルで拭いているのは汗でしょうか?それとも涙でしょうか…?
時が経っても色褪せず輝き続ける「sweet sweet sweet sweet reggae music♪」
本当に最高です。
プロダクションは↑11と同様です。
今回はスタワンの定番リディム「パーティ・タイム」を取り上げました。
脈々と受け継がれるレゲエの素晴らしさが詰まった名ファウンデーションリディムです。
次回も引き続きスタワンのファウンデーションリディム「フル・アップ」を取り上げます。