〈連想第2回〉
前回取り上げたショパンは、その後に続くワーグナーやリスト、さらにその後に続くドビュッシーなどに様々な影響を与えました。
今回はその中から、特にショパンからの影響が大きく、ショパンと同じフランス、パリで主に活動したドビュッシーを取り上げます。
ドビュッシーといえば印象派音楽家として、同時代の画家モネなどの絵画作品と併せて語られることの多い作曲家です。
ドビュッシーは元々ピアニストを目指していて、ショパンの門下生であったモーテ夫人に師事していたこともあり、その奏法はとても柔らかいタッチで繊細であったなどショパンの影響をかなり大きく受けています。
また、「ノクターン」「バラード」「マズルカ」「舟歌」「子守唄」などのほか、晩年には「エチュード」や「プレリュード」など、ショパンが遺した作品と同タイトル、同コンセプトのものを作曲するなど、生涯にわたってショパンの影響は随所に感じられます。
ショパンの中後期の作品、「プレリュード」「マズルカ」「舟歌」「子守歌」などからは、印象主義へとつながっていく近代的な淡く掴みどころのない響きが感じられるものも多く、そこには直接的な連続性を見出すことができます。
ドビュッシーの曲は印象派の絵画がそのまま音楽になったような淡く色彩感豊かなキラキラした楽曲ばかりですが、今回はその中からピアノ独奏曲を5選します。
1 夢想(1890)
ジャズやポップスなどでもカバーされることの多い曲、Reverie=夢想です。
タイトルのとおり夢のように淡くぼんやりとした儚いイメージの中にノスタルジックな深い響きがあり、心にぐっと迫ります。
これぞドビュッシーといったような曲で、淡々とした中にドラマチックな響きがある、初期ドビュッシー作品の代表的傑作です。
パリ生まれのアメリカ人ピアニスト「フランソワ=ジョエル・ティオリエ」の演奏が深みとクリアな響きが感じられぐっときます。
2 水の反映(1904)
全4集に分かれている「image 映像」という曲の中の代表的な一曲です。
個人的にこの曲でドビュッシーが本当に心の底から心酔する作曲家の1人になりました。それくらい感銘を受け、感動し、そして癒されました。
リストの「エステ荘の噴水」にインスピレーションを受けたとされ、ラヴェルの「水の戯れ」と並ぶ、水の様子を表現した傑作です。
タイトルどおり、水に映り揺れる映像が儚く移ろう、そんなキラキラした情景がモネの「睡蓮」などの絵画とともに頭に浮かびます。
この曲については、ドイツ人にも関わらずフランス印象派の演奏で名高い、45歳で交通事故により他界した「ヴェルナー・ハース」の演奏が、音の淡い響き、残像するような儚い表現が映像的で最高です。
3 バラード(1890)
とても儚く悲しげな響きの中に、深みやロマンチックな響きがあり引き込まれます。
こちらもクリアな音と深みのある演奏が素晴らしい「フランソワ=ジョエル・ティオリエ」です。
4 ロマンチックなワルツ(1890)
物憂げなイントロから始まり、徐々にドビュッシーらしい透明感のある映像的な展開になるのがとても素晴らしいワルツです。
同じく「フランソワ=ジョエル・ティオリエ」がやはりすごく透明感があり良いです。
5 夜想曲(1892)
ショパンはノクターンを21曲作曲しましたが、ドビュッシーはピアノ曲としてはこれ1曲です。
後に管弦楽曲として作られた曲は、タイトルは同じですがまた別の曲です。
しかし、どちらのバージョンもともに印象派的な淡い響きが色濃いドラマティックな曲です。
これも「フランソワ=ジョエル・ティオリエ」の透明感のある響きがとても良いです。
今回はショパンの影響を受けたドビュッシーのピアノソロ曲を5選しました。
ドビュッシーは実はジャズへもかなり影響を与えています。
「バド・パウエル」はドビュッシー、ラヴェルからの影響を公言し、「エロール・ガーナー」は「夢想」を録音しています。
そして最も有名なのは「ビル・エヴァンス」がドビュッシーの和音などを意識的に取り入れるなどして、ジャズの新しい潮流を築いたことです。
次回はこれらドビュッシーの影響を受けたピアニストの中から、まずは「エロール・ガーナー」を取り上げたいと思います。