〈連想第56回〉
前回取り上げたガーシュインは、ストラヴィンスキー、ラヴェルに弟子入りを断られ、最後にラヴェルに紹介状を書いてもらったナディア・ブーランジェに教えを請いますが、「あなたの才能の邪魔をしたくない」と断られてしまいます。
ナディア・ブーランジェは、ストラヴィンスキー、ラヴェル、ガーシュインと比べるとかなり知名度は低いと思いますが、偉大な経歴の持ち主でした。
まずは、「最高の音楽教師」として、ものすごい数の一流音楽家達を教育しています。
その一例を挙げるだけでも、「レナード・バーンスタイン」「ダニエル・バレンボイム」「ディヌ・リパッティ」「クインシー・ジョーンズ!」「ドナルド・バード!!」など、世代、ジャンルを超えた超一流アーティスト達を教えた、まさに「伝説の教師」でした。
次に、女性指揮者の先駆として様々なオーケストラを指揮者しました。
そして、妹のリリ・ブーランジェと共に作曲家として、数多くの作品を残しました。
妹のリリは、2歳の時に既に短命を宣告され、実際に24歳で亡くなりましたが、それまでの間、精力的に作曲活動などを行いました。
姉のナディアは、「作曲ではナディアにかなわない」と常々言っていたようで、非常に才能溢れる人物だったようです。
姉妹どちらもドビュッシーに直接的な影響を受けており、ピアノ曲からはショパンの響きなども垣間見られます。
今回は、そんなフランスの音楽家、ナディアとリリのブーランジェ姉妹の曲を4選します。
1 ナディア : チェロとピアノのための3つの作品 変ホ短調 (1914)
チェロとピアノによる小作品です。
ドビュッシーの影響をダイレクトに感じる色彩感豊かで美しい曲です。
とても映像的で、映画音楽っぽい感じもあります。
ピアノは「ペトラ・ギルミング」、チェロは「ドーラ・クズミン」です。
2 リリ : ピアノのための3つの小品(1914)
1と同年、妹リリによるピアノの小品。
ドビュッシーの影響は感じるもののより独創的な曲調となっています。
ピアノは、フランスの「クリストフ・シロドー」です。
3 ナディア : 幻想曲(1912)
ピアノとオーケストラのための幻想曲です。
こちらもとても映像的なとても美しい曲です。
映画音楽の源流を感じます。
演奏は、指揮が「スティーブン・スローン」、ピアノが「デイヴィド・グレイルザンマー」、「フランス放送フィルハーモニー管弦楽団」です。
4 リリ : ある春の朝に<オーケストラ・バージョン>(1918)
リリ生前最後の作品。
元々ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための作品だったものを、自身でオーケストラバージョンにしたもの。
ドビュッシーの響きを強く感じるとても美しい曲です。
演奏は、指揮「ヤン・パスカル・トルティリエ」、「BBCフィルハーモニック」です。
今回は、ガーシュインも教えを請うた伝説の教師ナディアと、短命だったリリのブーランジェ姉妹を取り上げました。
次回はガーシュインが教えを請うた3人のうちの一人、ストラヴィンスキーを取り上げます。