ジョージ・ガーシュイン〈クラシック編〉5選

クラシック
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〈連想第55回〉

前回取り上げたブルックリン出身のアイラとジョージのガーシュイン兄弟は、今に引き継がれるスタンダードナンバーを量産しました。

しかし、弟ジョージはそれに留まらず、クラシックの作曲家でもあり、様々な管弦楽曲やオペラなども残しています。

ベルクやシェーンベルクと親交があり、クラシックの新しい作曲技法を取り入れながらジャズと融合するなどの新基軸を打ち出しました。

ストラヴィンスキー、ラヴェル、ブーランジェに弟子入りを志願し、いずれも断られたという有名なエピソードもあります。

一般的にクラシック音楽史を語る時、その最後となるのが、このガーシュインの音楽なのではないでしょうか。

ストラヴィンスキーやリヒャルト・シュトラウスらと並んで、最後のクラシック作曲家として位置づけられる存在かと思います。

その後は、ジョン・ケージ、ブーレーズ、武満徹など、クラシックと言うよりは、現代音楽としてイメージされる作曲家が多く、知名度も一気に下がります。

クラシック音楽の系譜は、この後は映画音楽などの中でも受け継がれていくことになります。

今回は、そんなジョージ・ガーシュインのクラシック曲を5選します。

1 ラプソディー・イン・ブルー(1924)

まずは、ガーシュインと言えばやはりこの曲です。

「誰もがどこかで聴いたことがあるクラシック」的な、本当に馴染み深い曲かと思います。

ジャズとクラシックが融合したジャズシンフォニックの金字塔で、音楽的にもガーシュインの代表作です。

この曲をさらにメジャーにしたのは、上野樹里、玉木宏主演のドラマ「のだめカンタービレ」のエンディングテーマに使用されたことが大きな一因でしょうか。

のだめカンタービレは、ラブコメながらクラシック音楽に対してとても真摯に深く向き合っている漫画が原作で、ドラマ版とアニメ版があります。

ピアノ、指揮、その他色々な楽器の演奏者達が、色々なクラシックの名曲にチャレンジして、音楽家としてのキャリアだけでなく人間的にも成長していくストーリーは、本当に楽しいし面白く、「自分も何かに打ち込んでみたい!」という気持ちにさせられます。

すぎやまこういち先生や辻井伸行さんなど超一流の音楽家達も、このドラマが大好きだと公言しています。

そんな「のだめ」のサントラ、「のだめカンタービレ キャラクター・セレクション のだめ編」に収録されている、「レナード・バーンスタイン」指揮・ピアノ、「コロンビア交響楽団」の演奏です。

「ウェスト・サイド・ストーリー」の作曲家でもあるアメリカ人指揮者バーンスタインによる、クラシカルな雰囲気のある王道のガーシュインです。

10:10〜が有名なメロディーです。

2 パリのアメリカ人(1928)

ガーシュインのもう一つの代表作です。

前回も取り上げましたが1928年初演のミュージカルで、1951年にジーン・ケリー主演、ヴィンセント・ミネリ監督で映画化され、オスカー6部門受賞したモンスター映画となりました。

この曲を聴くと、やはり映画のラスト20分程度のひたすら踊る印象的なシーンが思い起こされます。

演奏は、クラシック指揮者・ピアニストとジャズピアニストという2つの肩書を持つ、とても珍しい、というか唯一無二の偉大な存在である「アンドレ・プレヴィン」の指揮、オーケストラは、ロンドン交響楽団です。

3 ピアノ協奏曲 ヘ長調(1925)

ガーシュインの中でも、最もクラシック寄りの作品の一つとも言える「ピアノ協奏曲」。

ガーシュインはこの曲を作曲するにあたって、かなり力を入れ、研究や試作を繰り返して書き上げた渾身の作品だったようです。

映画では、主人公(ジーン・ケリー)の友人である売れないピアニストが、妄想で自らが指揮・ピアノ演奏する印象的なシーンがあります。

演奏は、↑2と同じく「アンドレ・プレヴィン」が指揮とピアノ、オーケストラは、ピッツバーグ交響楽団です。

ジャズとクラシックを融合させたガーシュインの曲を、クラシック指揮者兼ジャズピアニストのアンドレ・プレヴィンが演奏する、これ以上ない組み合わせです。

映画のシーンもあわせてリンクします。

4 サマータイム(「ポギーとベス」より)(1935)

オペラ「ポギーとベス」の中で歌われるアリア。

この超特大スタンダードナンバーも、ガーシュインの曲、それもオペラの中の一部の曲でした。

歌は、ウィーンフィルニューイヤーコンサートでカラヤンと共演するなど日本でも知名度のある「キャスリーン・バトル」、指揮は長年N響の音楽監督を務めるなど何かと日本と縁深い「シャルル・デュトワ」、オーケストラはそのデュトワが長年音楽監督を務め世界的な楽団に育てたことで有名な「モントリオール交響楽団」です。

安定感と貫禄のあるライブ映像です。

5 子守歌(1919)

ガーシュイン唯一の室内楽です。

かなり初期の頃の作品にして、死後30年経ってから出版された遺作です。

とても穏やかで温かみのある曲で、他のガーシュインの曲とは違った趣を感じます。

演奏は、「ニューヨークフィルハーモニック弦楽四重奏団」です。

今回は、ジャズとクラシックを融合したガーシュインのクラシック作品を取り上げました。

このガーシュインや後期ラヴェルなどのジャジーで近代的な響きは、この時代独特のもので、どこかノスタルジックなものを感じます。

さて次回は、ガーシュインが教えを請い、同時代に活躍したストラヴィンスキー、ラヴェル、ブーランジェをそれぞれ取り上げていこうと思います。