定番リディム⑥〈Get In The Groove〉12選

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〈連想第130回〉

レゲエの定番リディムを連続して取り上げています。

その中でも、レゲエのレジェンドレーベル「スタジオ・ワン」通称「スタワン」がオリジナルのリディムを4回連続で取り上げていますが、今回もスタワンからの一曲「ゲット・イン・ザ・グルーヴ」です。

「絶好調!」「ゴキゲンだぜ!」のような意味を持つ「ゲット・イン・ザ・グルーヴ」というタイトルのとおり、勢いがあってテンションが上がる系のリディムです。

オリジナルは毎度おなじみ「ザ・ヘプトーンズ」、プロデュースはもちろん「クレメント・コクソン・ドット」、演奏が「サウンド・ディメンション」の鉄板メンバーで、1967年にリリースされています。

そして、このリディムにはもう一つ「アップ・パーク・キャンプ」という別名(別バージョン)があります。

これは、ロックステディ期からレゲエ黎明期にかけてレゲエの基礎を築いたレジェンドシンガー「ジョン・ホルト」が「ジョー・ギブス」レーベルから1977年にリリースした曲「up park camp」のヒットに由来しています。

この2つのバージョンは、ベースラインと2小節ごとに合いの手のように入る「ティーラリラ♪」という音は共通していますが、リディムのメインとなる冒頭のメロディーが異なっています。

「ゲット・イン・ザ・グルーヴ」は勢いのあるホーンセクション、「アップ・パーク・キャンプ」は緩めのオルガン、とそれぞれ特色がありますが、両者をことさら区別せずに、どちらに対しても「ゲット・イン・ザ・グルーヴ・リディム」「アップ・パーク・キャンプ・リディム」と呼んだりもします。

レゲエは一様にしてそういう感覚で、厳密な括りや決め事にはこだわらない、懐の深ーい文化なのです。

さらに、それとは別にベースラインも別パターンがあったり、「アップ・パーク・キャンプ」というフレーズが「ノー・マンズ・ランド」に置き換わったりなど何層にも歴史が積み重なったリディムです。

そんな多様性を持つリディム「ゲット・イン・ザ・グルーヴ(アップ・パーク・キャンプ)」リディムから12選します。

1 Cornell Campbell – No Man’s Land(1979,1977)

一聴してそれとわかる「透き通った美声」レゲエ史上No1「コーネル・キャンベル」です。

歌は「ジョン・ホルト」「アップ・パーク・キャンプ」の替え歌的な感じでカバーしています。

オケはヘプトーンズバージョンとジョン・ホルトバージョンの2種類それぞれありますが、歌はどちらも同じです。

ヘプトーンズバージョンは1979年リリースのアルバム「yes i will」に収録されていて、スタワンのオケをそのまま使ったもの、ジョン・ホルトバージョンは「ジョー・ギブス」レーベルからシングルリリースされたものです。

2 Sugar Minott – Hang On Natty(1978),Chant A Psalm(1980)

定番リディムシリーズの常連レジェンド「シュガー・マイノット」です。

シュガー・マイノットはこのリディムがお気に入りだったらしくたくさんのバージョンを自らリリースしたりプロデュースしたりしています。

ここではスタワンからリリースされた第一弾と、自らのレーベル「ブラック・ルーツ」からリリースされた第二弾を取り上げます。

3 Freddie McGregor – Come Now Sister(1979)

「シュガー・マイノット」「デニス・ブラウン」「グレゴリー・アイザック」と共にレゲエシンガー四天王の一人とされている「フレディ・マクレガー」です。

スタワンのオケを使っていますが、レゲエには珍しくフェンダーローズがプラスされていて、とてもソウルフルな印象となっています。

優しくソウルフルなゲット・イン・ザ・グルーヴです。

4 Barrington Levy – Shine Eye Girl(1979)

定番リディムシリーズ毎度おなじみのカナリアボイス「バーリントン・リーヴィ」です。

この時代の鉄板、「VPレコーズ」傘下の「ジャー・ガイダンス」レーベルから、レジェンド「ヘンリー・ジュンジョ・ローズ」プロデュースのシングル曲です。

この時期のバーリントン・リーヴィの作品はどれも神がかっていて、宇宙と呼応しているかのような素晴らしい歌声とメロディーばかりで最高です。

この曲も例にもれず、この後たくさんのアーティストがこの曲のフレーズを使った曲をリリースしています。

名アルバム「saolin temple(少林寺)」に収録されています。

後半はダブバージョンで、こちらもまた最高です。

5 Lady Ann – Shine Eye Boy(1981)

「informer」のヒットで有名なフィーメールディージェーの草分け「レディ・アン」です。

↑4と同様のフレーズを使った替え歌的な曲で、とても楽しいです。

プロデュースは「ルーツ・トラディション」レーベルの主催者「エロール・ドン・メイス」です。

6 Early B – Poor Class Want Mass(1984),C.Bert(1981)

毎度登場のレジェンド「アーリー・ビー」です。

サウンド「キラマンジャロ」通称ジャロで「スーパー・キャット」と共に一時代を築きました。

「プア・クラス・ウォント・マス」はキャリアのピークとも言える時期に、毎度おなじみ「ミッドナイト・ロック」レーベル主催者の「ジャー・トーマス」プロデュースによるもので、アルバム「four wheel no real」に収録されています。

「シー・バート」はアーリー・ビーのキャリア最初期のシングル曲で、テンション高めのトースティングがまたかっこいいです。

7 Michael Palmer – Mr.Landload(1980)

80年代に活躍した、いぶし銀で味のあるシンガー「マイケル・パーマー」です。

鼻にかかったような歌声と語尾にこぶしがかかるスタイルが味わい深く最高です。

この曲は「マイケル・パーマー」初録音の曲で、ベースラインがオリジナルのものとは違う変速「ゲット・イン・ザ・グルーヴ」となっていますが、このベースラインもこの後脈々と受け継がれていきます

メロディーは↑4や5と同じフレーズを使っています。

プロデュースは、ジャマイカ初の女性プロデューサー「ソニア・ポッティンガー」です。

後半にはダブバージョンです。

8 Half Pint – Romeo And Juliet(1984)

レゲエシンガーの歌からは、皆一様に幸福感や開放感が溢れ出ていますが、その中でも開放感No1はこの「ハーフ・パイント」で決まりです。

その澄み渡る伸びやかな歌声は、心が雲一つない青空のように澄みきっていきます。

ベースラインが↑7の「マイケル・パーマー」バージョンと同様の変則タイプです。

「ブラック・スコーピオ」レーベルからリリースされたシングル曲で、プロデュースは同レーベルの主催者「モーリス・ジョンソン」です。

9 Cocoa Tea – Ricker’s Island(1990)

甘くハスキーで優しさあふれる歌声が最高なレジェンドシンガー「ココ・ティー」です。

↑1の「no mans land」の替え歌的な曲で、「VPレコーズ」傘下の「グリーンスリーブス」レーベルからリリースされた同名アルバムのタイトル曲となっています。

同年には「ナード・ランクス」をフューチャーした「mi nu like rickers island」という別バージョンもシングルリリースされています。

プロデュースはどちらも「ミスター・ドゥー」レーベルの主催者「ミスター・ドゥー」です。

ちなみに「アップ・パーク・キャンプ」「ノー・マンズ・ランド」「ライカーズ・アイランド」いずれも「刑務所」のことです。

10 Santa Rankig – Raff Nech Chicken(1987)

力が入らない感じの脱力系トースティングが何ともクセになる「サンタ・ランキング」です。

知名度は低いですが、80年代半ばに活躍した味のあるディージェー「ミスター・サンタ」です。

ニューヨークのダブレーベル「ワッキーズ」からリリースされた同名アルバム「ruff neck chicken」に収録されています。

プロデュースは、ワッキーズの主催者「ブルワッキー」こと「ロイド・バーンズ」です。

ベースラインが↑7や8と同じ変則タイプで、コーラスにシュガー・マイノットが参加していることなどが特徴的です。

歌詞の中にも何度も「シュガー・マイノット」の名前が出てきて、その都度シュガー・マイノットの声が入ってくるのも面白いです。

聴いていて笑顔になる、体が自然に動く、とても楽しい変則ゲット・イン・ザ・グルーヴです。

11 Gregory Peck – No Chika Bow(1990)

映画「ローマの休日」で有名なハリウッドスター「グレゴリー・ペック」から命名したディージェー「グレゴリー・ペック」です。

レゲエアーティストはハイウッド俳優から名前を命名することが多いことはこれまでも触れてきましたが、この「グレゴリー・ペック」はその最後のディージェーかもしれません。

「ブラック・スコーピオ」レーベルからリリースされたコンピレーションアルバムの収録されていて、プロデュースは同レーベルの主催者「ジャック・スコーピオ」こと「モーリス・ジョンソン」です。

12 Mega Banton – First Position(1993)

90年代に活躍したディージェー「メガ・バンタン」です。

80年代後期から90年代前期にかけてトレンドだったマッチョ&タフネス路線のディージェーの一人で、シリアス路線に転向した「ブジュ・バンタン」とは異なり、タフネス路線を貫きました。

こちらは本家「VPレコーズ」からリリースされたアルバム「first position」に収録されているタイトル曲で、ドラムに「スライ&ロビー」が参加、プロデュースはこちらも「ジャック・スコーピオ」こと「モーリス・ジョンソン」です。

時代を象徴するような一曲です。

今回はスタワンがオリジナルの定番リディム「ゲット・イン・ザ・グルーヴ(アップ・パーク・キャンプ)」リディムを取り上げました。

次回はまたまたスタワンがオリジナルのリディム「gonna fight」リディムを取り上げます。