ミゼル・ブラザーズ〈スカイ・ハイ・プロダクション〉6選

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〈連想第11回〉

前回取り上げた「ドナルド・バード」の曲は、全て「ミゼル・ブラザーズ」がプロデュースしたものでした。

「ミゼル・ブラザーズ」は兄フォンスと弟ラリーのことを指し、兄はジャクソン5などを手がけた実績を持ち、弟はなんとNASAのエンジニアでした。

その後2人が設立した会社「スカイ・ハイ・プロダクション」で多くの曲を作曲、編曲、プロデュースしました。

フォンスはハワード大学在学中、生徒と教授の関係であった「ドナルド・バード」に見出され、その後、アーティストとして低迷中だった「ドナルド・バード」からの声かけにより作られたアルバム「blackbyrd」を皮切りに「ミゼル・ブラザーズ」の快進撃が始まりました。

サウンドはとても都会的かつ未来的で、ジャズ、ソウル、ファンクのテイストがミックスされたまさにフュージョンな曲調が特徴です。

どの曲も洗練された中に、黒く、甘く、切なく、そして宇宙的な広がりを感じる、時間や空間をトリップするような感覚が呼び起こされます。

今回は、そんな「ミゼル・ブラザーズ」が「ドナルド・バード」以外にプロデュースしたアーティストの作品から6選します。

1 Bobbi Humphrey – New York Times(1974)

「スカイ・ハイ・プロダクション」で「ドナルド・バード」の次に思い起こされるのは「ボビー・ハンフリー」です。

アフロヘアが印象的な女流フルート奏者で、このタッグによる曲は全曲名曲です。

代表曲の1つであるこの曲は、アルバム「satin doll」に収録されている「これぞスカイハイプロダクション!」とも言うべき、スカイハイプロダクションのサウンドの典型であり、魅力がたっぷり詰まっためちゃめちゃかっこいい曲です。

都会的で洗練されていながら、開放感やトリップ感があり心が高まりながらも癒やされる世界感に没入します。

2 Bobbi Humphrey – Please Set Me At Ease(1975)

続いてもボビー・ハンフリーの大名曲。

とても都会的で洗練されていながら、独創的な世界観が感じられてめちゃめちゃかっこいいです。

ブルー・ノートから出されたアルバム「fancy dancer」に収録されている曲で、「マッドリブ」がカヴァーしているほか、ヒップホップバンド「ザ・ルーツ」が「distortion of statics(at ease remix)」で使用しています。

3 Johnny Hammond – Call On Me (1974)

オルガン奏者「ジョニー・ハモンド」のアルバム「gambler’s life」から、まったりしつつもかっこいい1曲。

「ドラゴン・アッシュ」のヒット曲「let your self go,let myself go」のカップリング曲「M」にサンプリングされています。

4 The Blackbyrds – All I Ask(1974)

「ザ・ブラックバーズ」は、「ドナルド・バード」が大学の教え子たちを集めて結成したバンドです。

アルバム「city life」に収録されている曲で、ハーモニカの音色が切なくノスタルジックで、たまらない気持ちになります。

故「2パック」「lord knows」や故「MFドゥーム」が自身のグループ「KMD」「sorcerer」(ソロの別名義でのインスト版「メタルフィンガーズ」「licorice」、追悼曲「ジョン・ロビンソン」「sorcerers」も同トラック)などがこの曲からサンプリングしています。

5 A Taste Of Honey – I Love You(1979)

女性ボーカルグループ、「ア・テイスト・オブ・ハニー」。

ディスコ色が強くなってきた中で、フリーソウル色の強い胸にグッとくる一曲。

アルバム「another honey」に収録されている曲で、後年フリーソウルのコンピレーションシリーズのアルバム「notes」にも選曲されています。

6 Bobbi Humphley – Sanfrancisco Lights (1974)

最後に「ボビー・ハンフリー」をもう1曲。

アルバム「satin doll」に収録されている、イントロがめちゃめちゃかっこいい曲。

「ブランド・ヌビアン」が「love me or leave me alone」でサンプリングしています。

今回は取り上げた「ミゼル・ブラザーズ」が率いる「スカイ・ハイ・プロダクション」のバンドメンバーは、ドラムの「ハービー・メイソン」、ギターの「デイヴィッド・T・ウォーカー」と「ワー・ワー・ワトソン」、ベースの「チャック・レイニー」など、ソウル、フュージョンの歴史を築いてきた超豪華メンバーでした。

そしてこの演奏者たちは日本の某国民的アイドルと大きな接点があります。

ジャズ、フュージョン界隈では有名ですが、そのアイドルとはそう、SMAPです。

ドリカムとかとも演奏していましたが、SMAPの初期作品ではかなりどっぷり参加してます。

というわけで次回はSMAPの初期作品を取り上げます。