定番ブレイクビーツ⑤〈Hihache〉12選

ヒップホップ
ヒップホップブレイクビーツ

〈連想第119回〉

ヒップホップの定番ブレイクビーツを連続して取り上げています。

今回取り上げるのは、ニューヨーク・ロングアイランドで結成し、フランス・パリでブレイクした異色のバンド「ラファイエット・アフロ・ロックバンド」の1973年リリースの2ndアルバム「ソウル・マコッサ」に収録されている「ハイハッチ」を取り上げます。

「ハイハッチ」は前回取り上げた「インピーチ・ザ・プレジデント」と並んでブレイクビーツの中でも定番中の定番、あらゆる曲にさりげなく使われていることの多い非常に使い勝手の良いブレイクビーツです。

インピーチが隙間の多い打ち込みやすいブレイクビーツなのに対し、ハイハッチは隙間がなくグルーヴ感が生み出されるブレイクビーツという特徴の違いがあり、共に息長く共存していました。

荒々しくハードコアなヒップホップからスムージーなR&Bまで幅広く使用されていて、何気なくどこかで聴いたことがある、そんな存在のブレイクビーツではないかと思います。

そんな「ハイハッチ」を使用した曲を12選します。

1 Biz Markie Ft. T.J.Swan – Nobody Beats The Biz(1987)

「ハイハッチ」使いの元祖的代表曲はなんと言ってもこの曲、「ジュース・クルー」のコミカルなオールマイティーキャラである「ビズ・マーキー」のクラシックソング「ノーバディ・ビーツ・ザ・ビズ」です。

プロデュースはもちろん「マーリー・マール」です。

この曲で使われて以降定番ネタとなった「スティーブ・ミラー・バンド」の「フライ・ライク・アン・イーグル」をぶつ切りで打ち込んだ最高に2枚使い映えするトラックであるだけでなく、数多くの曲に声ネタとしても使われている声ネタの定番曲でもあります。

ヒップホップクラシックであるビズの1stアルバム「Goin’ Off」されている、「ジュース・クルー」=「マーリー・マール」作品の最高傑作の1つです。

2 Wu-Tang Clan – Wu -Tang Clan Ain’t Nuthin’ Ta Fuck Wit(1993)

「ウータン・クラン」の伝説の1stアルバム「Enter The Wu-Tang:36 Chambers(邦題:燃えよウータン)」に収録されていてシングルカットもされた代表曲の1つ。

荒々しいラウドなトラックに、プロデュースの「レザ」が自らファーストバースとサビそしてグループ紹介を担う大車輪で、「レザ」の曲という印象が強い曲です。

「レザ」以降は「インスペクター・デック」→「メソッド・マン」とマイクリレーします。

「ハイハッチ」がグルーヴ感を生み出していて、アルバムの中でも最もテンションが上がりアドレナリンが出る曲となっています。

3 Black Moon – Back Em Down(1993)

ウータンと並んで1993年を代表・象徴するレジェンド「ブラック・ムーン」の大名盤1stアルバム「Enta Da Stage」に収録されている曲で、シングルカットもされました。

ニュースクール的なジャジーな上ネタにフィルターをかけまくってくぐもらせてラウドな音色にしてアンダーグラウンド感が醸し出される新境地を切り開いた最高にかっこいいこのアルバムを象徴するような一曲です。

プロデュースはもちろん「ダ・ビートマイナーズ」の「イヴィル・ディー」です。

ドナルド・バード×スカイ・ハイ・プロダクション」による洗練された上ネタを、「ハイハッチ」がグルーヴィーに下支えしています。

4 L L Cool J – Jinglin Baby(1989)

この曲のリリース当時既に大スターだった「エル・エル・クール・ジェイ」の3rdアルバム「Walking With a Panther」に収録されているシングル曲。

一般的によく知られている「マーリー・マール」プロデュースで大ヒットしたシングルバージョンではなく、アルバムバージョンのほうに「ハイハッチ」が使われています。

「セントラル・ライン」使いの華々しい印象のシングルバージョンももちろんテンションめちゃめちゃ上がりますが、「ハイハッチ」がグルーヴィーな疾走感を生み出しているむさ苦しい印象のアルバムバージョンもめちゃめちゃかっこよくてテンションが上がります。

5 Kris Kross Ft.Super Cat – Alright(1993)

前回「インピーチ・ザ・プレジデント」の回で特大ヒットソング「ジャンプ」を取り上げた「クリス・クロス」ですが、今回はそれから僅か1年後に少年だった二人が大きく成長してリリースされた2ndアルバム「Da Bomb」からの先行シングル曲「オーライ」です。

ジャマイカのスーパースター「スーパー・キャット」をフューチャーしたキャッチーかつテンションが上がるヒットソングです。

6 Souls Of Mischief – That’s When Ya Lost(1993)

西海岸カリフォルニアで活動していた「ハイエロ・グリフィックス」一派から、「ソウルズ・オブ・ミスチーフ」の名盤1stアルバム「93 ‘til Infinity」に収録されているシングル曲です。

当時西海岸で席巻していた「ドクター・ドレー」や「スヌープ・ドッグ」らを代表とする「ジー・ファンク」と呼ばれていたギャングスタラップとは一線を画していたニュースクール系の作風ですが、同じような立ち位置の「ザ・ファーサイド」と比べると、より黒々しくファンクネスな印象があります。

そんな「ハイエロ一派」を象徴するようなこの曲では、「ハイハッチ」の冒頭の1小節のみループしていて、他のドラムも重なっているのでわかりづらいかもしれませんが、パンチの効いた印象を醸し出しています。

7 Channel Live Ft. KRS-One – Mad Izm(1994)

ヒップホップレジェンド「ケーアールエス・ワン」の弟子的存在、元教師である「チャンネル・ライブ」の1stアルバム「Station Identification」に収録されているシングル曲です。

「ハイハッチ」を細切れにして打ち込み直しているのでわかりづらいですが、冒頭の入り部分のツンのめる感じが活かされていてかっこいいです。

3人のキレキレなラップの掛け合いもめちゃめちゃかっこよく、1994年という急激に移ろう時代を象徴する一曲です。

8 Lamp Eye – 証言(1996)

ジャパニーズヒップホップが盛り上がってきて認知度も高まってきた時期に、当時の第一線のラッパーが集った「ランプ・アイ」の代表曲。

「リノ」→「ユー・ザ・ロック」→「ジー・ケー・マーヤン」→「ジブラ」→「ツイギー」→「ガマ」→「デブ・ラージ」とマイクリレーします。

プロデュースは「DJヤス」。

「ハイハッチ」の冒頭をシンプルにそのまま使用しています。

9 Mary J Brige Ft. The Notorious B.I.G. – Real Love Remix(1992)

前回「インピーチ・ザ・プレジデント」の回で取り上げた特大ヒット曲「リアル・ラブ」のリミックスです。

ヒップホップのトラックでR&Bシンガーが歌う「ヒップホップソウル」を推し進めた代表格である「バッドボーイ」レーベルの「ショーン・パフィ・コムズ(当時)」のプロダクションで、彼が大プッシュしたブルックリンのレジェンド「ザ・ノトーリアス・ビー・アイ・ジー」のデビュー曲でもあります。

この曲のヒット以降、R&Bでもこの「ハイハッチ」が積極的に使われるようになりました。

10 Shanice – It’s For You(1993)

子供時代から活動し、「モータウン」レーベルからリリースされた「i love your smile」が特大ヒットした「シャニース」の3rdアルバム「21… Ways to Grow」に収録されているシングル曲です。

この時代のR&Bを象徴するようなスムージーでグルーヴィーな高クオリティな名曲です。

この時期はR&Bにとっても黄金時代と呼べる時期で、出る曲出る曲名曲だらけ、どれも胸キュンで心がワクワクする、そしてかっこいい曲がたくさんあり、この曲もまさにそんな名曲の一つです。

11 Jade – Everyday Of The Week(1994)

「don’t walk away」のスマッシュヒットで有名な「ジェイド」の2ndアルバム「Mind, Body & Song」に収録されているシングル曲です。

R&B黄金時代のヒットソングの1つで、クールなトラックとコーラスがかっこいい高クオリティな曲で、「ハイハッチ」がグルーヴ感をもたらしています。

12 Presto – Relax Your Mind(2001)

インストヒップホップ、ジャジーヒップホップ、チルホップ、ローファイ系の隠れた先駆的存在の一人「DJプレスト」の代表曲です。

2000年代初頭、メインストリームとアンダーグラウンドの両極化が進んでいたヒップホップシーンにおいて、ジャジーなインスト系ヒップホップのムーブメントが起こりましたが、プレストはその立役者の代表的存在の一人です。

代表曲であるこの曲は、「inflight instrumental」というインストアルバムに収録されているほか、「mushroom jazz 3」というジャジー系ヒップホップのコンピレーションアルバムにも収録され脚光を浴びました。

「ハイハッチ」は組み替えて打ち込み直していて、さらに他のドラムも重なっているのでわかりづらいですが、グルーヴィーでスムージーなこの曲の印象を下支えしています。

今回は、「ラファイエット・アフロ・ロックバンド」の「ハイハッチ」を使用した曲を12選しました。

荒々しい曲からまったりソングまで幅広くオールマイティな名ブレイクビーツです。

次回は、荒々しくハーコーなドラムの定番、「sing a simple song」を取り上げます。