定番リディム②〈Real Rock〉5選+〈Real Rockを使用したヒップホップ〉2選

レゲエ
リディムレゲエ

〈連想第126回〉

ダンスホールレゲエの定番リディムを連続して取り上げています。

今回は、前回取り上げた「スタラグ」と双璧をなす大定番リディム「リアル・ロック」を取り上げます。

「リアル・ロック」は、1967年に「サウンド・ディメンション」が「スタジオ・ワン」レーベルからリリースした曲で、プロデュースはレーベルの創始者であるレジェンド「コクソン・ドット」です。

「スタジオ・ワン」通称スタワンは、レゲエを語る上で(聴く上で)絶対に外せない超重要レーベルです。

というよりもレゲエの歴史そのものと言って過言ではなく、ダンスホールレゲエの発祥にもこのスタワンが大きく関わっています。

というのも後に定番リディムと言われるようになる数多くのリディムのオリジナルが、このスタワンレーベルからリリースされているものだからです。

「リアル・ロック」はその代表格で、プロデュースした「コクソン・ドット」自身もとてもお気に入りだったようです。

同じ音階が細切れに連続するというレゲエの典型的なベースラインが特徴です。

1拍目にベースがなく2拍目にスネアとベースが入りその後隙間の空いた細切れベースが連続することにより強烈なグルーヴ感が生み出されています。

かつて「レゲエはベースミュージック」とよく言われていました。

ヒップホップがドラムに重きを置いているのに対してレゲエはとにかくヘビーなベースが特徴です。

屋外にどでかいスピーカーを設置し爆音で音楽を鳴らす「サウンドシステム」が下地となり、「リディム」とは「ベースラインと同義」と言っても差し支えないくらいです。

色々なミュージシャンが「あのベースは俺が作った」と誇らしげに語っています。

その中でもこの強烈でヘビーなインパクトのあるベースラインが持ち味の「リアル・ロック」は、まさにその代表的存在です。

今回はそんな「リアル・ロック」リディムの曲を5選し、その後にこのリディムを使用したヒップホップを2曲取り上げます。

1 Willie Williams – Armagideon Time(1978)

リアルロックリディムの代表曲と言えばこの曲「ウィリー・ウィリアムス」の代表曲「アルマゲドン・タイム」です。

この曲のフレーズはレゲエにおいてそれこそ数え切れないほど何度も何度も使われている大定番フレーズとなっています。

オリジナルのオケをほぼそのまま使っています。

プロデュースはオリジナルと同じ「コクソン・ドット」です。

2 Barrington Levy – Looking My Love(1979)

70年代末期から80年代半ばを中心に大ブレイクし、イギリスやニューヨークでもヒットを飛ばした大御所、通称「カナリアボイス」と呼ばれる「バーリントン・リーヴィ」です。

プロデュースは、70年代後半から80年代半ばまで1時代を築いたレーベル「ボルケーノ」の創設者「ヘンリー・ジュンジョ・ロウズ」です。

ヘンリー=ボルケーノとバーリントン・リーヴィはそのデビューから歩みを共にした師弟又は盟友的存在で、同時期に数多くの名曲を残しました。

80年前後に多くみられたゆったりまったりしたスタイルの一曲です。

3 Simple Simon – Obey Your Mother & Father(1985)

80年代半ばに活動した知る人ぞ知るシングジェイ「シンプル・サイモン」です。

80年代初頭に大ブレイクしたシングジェイの草分け「イーク・ア・マウス」の「バンバンビリ ボンボンビリ〜♪」のスタイルを軽快にしたようなスタイルで、とてもスピード感溢れるリアルロックとなっています。

聴いていて自然に体が動いて踊りだしたくなるような楽しい曲調です。

プロデュースはダブの伝道者「バニー・リー」です(ダブの創始者はキング・タビー)。

4 Super Cat – Too Greedy(1994)

80年代半ばから90年代半ばを中心に一斉を風靡したレジェンド「スーパー・キャット」です。

80年代半ばから、師匠である「アーリー・ビー」らと、サウンド「キラマンジャロ」で名を上げ、この時期にはスーパースターとしてアメリカへも進出していた時期でした。

師匠「アーリー・ビー」の直系スタイルは、後に「ショーン・ポール」へ多大な影響を与えていきます。

この曲はそんなスーパー・キャット(キャット=インド系)のキャリアのピークとも言える時期にリリースされたクラシックで、冒頭のフレーズは↑1の「アルマゲドン・タイム」のメロディーを拝借しているなど定番づくしの最高にテンションが上がる一曲です。

プロデュースは「ウィリアム・マラグ」。スーパー・キャットの本名です。

5 Courtney Melody – Stop It(1988)

90年前後を中心にたくさんの名曲を残したシングジェイ「コートニー・メロディー」です。

以前「ダンスホールレゲエ ⑥〈80s後期シンガー〉」でも取り上げた、これ以上なく究極にチープでデジタルな「リアル・ロック」です。

不思議なもので、このチープさが異様なグルーヴ感を産み出し、コートニー・メロディーの歌唱と相まって、とてもプリミティブな感覚、宇宙との呼応をも感じます。

金属音やデジタル音は往々にして宇宙との繋がりを感じさせますが、この曲もその一つです。

プロデュースは「デニス・スター」レーベルの主催者「デニス・ヘイレス」です。

〈Real Rockを使用したヒップホップ〉

6 KRS One – Black Cop(1993)

前回に引き続き「ケーアールエス・ワン」です。

レゲエとヒップホップの接点を語る際に必ず登場する、避けて通ることのできない存在です。

「BDP(ブギ・ダウン・プロダクション)」が解散し、ソロとなった「ケーアールエス・ワン」の1stアルバム「Return of The Boom Bup」に収録されている曲です。

リアルロックのベースラインが使用され、ケーアールエス・ワンのハイテンションなラガフロウも全開です。

7 Mad Lion – Shoot To Kill(1993)

↑6のトラックをそのまま使った「マッド・ライオン」のシングル曲。

KRSワンの自主レーベルからの第1段アーティストで、レゲエへの熱意が感じられます。

今回は定番リディムの中でもスタラグと並んでレゲエ以外のジャンルでも知名度の高い代表的な存在である「リアル・ロック」リディムを取り上げました。

次回はリアルロックと同じくスタワン発の定番リディム「far east」を取り上げます。