クロード・ドビュッシー③〈ピアノ曲・室内楽曲〉5選

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クラシックピアノ

〈連想第63回〉

フランス印象派音楽の代表「クロード・ドビュッシー」を連続して取り上げています。

ドビュッシーは、元々はピアニストを目指していて、ショパンの弟子だったとされるモーテ夫人からピアノのレッスンを受け、何度もピアノコンクールを受けています。

しかし、何度受けてもコンクールで1位を受賞することができなかったためピアニストの道を諦め、作曲家の道を歩むこととなりました。

作曲については、前回取り上げた「ペレアスとメリザンド」以前は、ピアノ曲を中心とした小品が多く、この時期にドビュッシーの代名詞とも言える様々な曲が書かれています。

第2回:ピアノソロ曲」で取り上げた「夢想」や「ロマンティックなワルツ」「バラード」「夜想曲(ピアノ版)」なども全てこの時期に書かれたものです。

何かと比較されるドビュッシーとラヴェルは、13歳の年齢差があるので、それも要因かとは思いますが、ドビュッシーの音楽からは「19世紀末」を感じ、ラヴェルの音楽からは「20世紀初頭」を感じます。

それは、ドビュッシーのこの時期の小作品群に強いイメージがあるからかもしれません。

今回はそんなドビュッシーの、小品を中心としたピアノ曲と室内楽曲から5選します。

1 ベルガマスク組曲(1890)

おそらくドビュッシーで最も知名度の高い、広く知られている曲「月の光」が含まれる4曲からなるピアノの組曲。

一般的に、ドビュッシーと言えばこういうイメージ、という感じではないでしょうか。

第1曲からは「ドビュッシー時代の幕開け」を感じさせるテンションを感じます。

第3曲目に当たる「月の光」は元々、1882年に歌曲として作られましたが、ピアノ曲としてあらためて書かれました。

また、第4曲目の「パスピエ」は、すぎやまこういち先生の「広野を行く」に似ているということで有名な曲でもあります。

世代の人であれば間違いなく聴いたことがあるであろうドラクエのフィールドのテーマです。

すぎやまこういち先生は、ドビュッシーからの影響を公言しており、他にもラーミアのテーマで有名な名曲「おおぞらをゆく」も、ドビュッシーから構想を得たと述べています。

演奏は、ドビュッシーと言えば「ヴェルナー・ハース」が素晴らしく、どうしても紹介したかったので、一曲ずつ紹介していきます。

ドイツ人ながら、印象派の雰囲気を醸し出す「間」や「残像感」、「響き」などが絶妙で、ドビュッシーの世界観を完璧に表現しています。

〈前奏曲〉

〈メヌエット〉

〈月の光〉

〈パスピエ〉

2 2つのロマンス(1891)

元々歌曲として作られた曲ですが、ピアノとヴィオラ、またはチェロ、時にはヴァイオリンと共演されることも多い小品です。

この曲、「これぞドビュッシー」という感じの、印象派的な、絵画的で内省的で淡く淡々としてそれでいて、メロディーやハーモニーがとても美しい、本当に心の深いところに響鳴する素晴らしい曲だと感じています。

今回は、ピアノとヴィオラバージョンをリンクします。

2つのうちの1曲目「そぞろな悩める心」を、1880年に同じく歌曲として書かれた「ボー・ソワール(美しい夕暮れ)」とあわせて演奏されています。

ピアノはブルガリア出身で後にブラジル人に帰化した「イリーナ・ラチェワ」、ヴィオラがブラジルの「ジャイロ・チャベス」です。

また、オリジナルの歌曲バージョンもリンクします。

歌は、アメリカのソプラノ歌手「アーリーン・オジェー」、ピアノ伴奏は、「カティア・フィラバウム」です。

3 レントより遅く(1910)

大作が多かった後期ドビュッシーにあって、初期の頃を思わせる小品。

大衆音楽に対して自身の見解、流儀などドビュッシーなりのアプローチを示した曲と言われています。

ヴァイオリンは、ロシア帝国(現リトアニア)生まれの、20世紀を代表するヴィルトゥオーゾ、通称「ヴァイオリン王」の「ヤッシャ・ハイフェッツ」で、ピアノは、同じくロシア帝国出身の「エマニュエル・ベイ」です。

4 2つのアラベスク(1891)

「月の光」と並んでドビュッシーを代表する曲「アラベスク」です。

ドビュッシーを知らなくてもこの曲は知っている、というくらいポピュラーな曲ではないでしょうか。

演奏者は、響きがとてもきれいで、情感豊かな演奏が胸に迫る、イギリスの「ロナン・オーラ」です。

5 子供の領分(1908)

自身の娘、エマのために作られた6曲からなるピアノ組曲。

子供が聴いたり弾いたりするためのものではなく、大人から見た子供の様子や心境を表現した曲で、コンセプトとしては、シューマンの「子供の情景」と同じようなものかと思います。

第6曲目の「ゴリウォークのケークウォーク」が特に有名で、聴き馴染みがあるのではないでしょうか。

この曲は、ゴリウォークという黒人の男の子の人形キャラクタが、ケークウォークという黒人のダンスを踊る、というもので、奇しくもクラシックとブラックカルチャーが初めて接触した作品の1つとも言われています。

後にジャズなどに大きな影響を与えたように、ドビュッシーの感性は、ブラックカルチャーにも響くところが大いにあったのでしょう。

6曲は↓のとおりです。

第1曲 グラドゥス・アド・パルナッスム博士
第2曲 象の子守歌
第3曲 人形へのセレナード
第4曲 雪は踊っている
第5曲 小さな羊飼い
第6曲 ゴリウォーグのケークウォーク

演奏は、ドビュッシーの演奏を得意としたフランスの「モニク・アース」です。

今回は、印象派というイメージがより強く感じられるドビュッシーのピアノ曲・室内楽曲を取り上げました。

最後にもう1回ドビュッシーを取り上げようと思います。

それは、当初ピアニストを目指していたドビュッシーにとってとても大きな存在であった「ショパン」に関連する作品についてです。

ドビュッシーはショパンの弟子だった「モーテ夫人」にピアノの教示を受けていたほか、ショパンの作品をはっきりと意識した作品をいくつか作っています。

次回は、そんなドビュッシーの、ショパンと関連する作品を取り上げます。